旭の震災継承文芸賞 一区切り

高木潔
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 千葉県旭市で20日、東日本大震災を語り継ぐことを目的に創設された「旭いいおか文芸賞『海へ』」の作品集出版記念会があった。過去5回の応募総数は全国の約8千人に上る。スタッフの高齢化などを理由に今年度で休止となるが、存続の形を模索していくという。

 詩やエッセーを自筆で応募し、審査会では応募者が自ら朗読するユニークな文芸イベントだった。

 この日の出版記念会でも、旭市のかとりかえで君(受賞時小学1年)が、広島に住む祖父母を訪ねた際の、瀬戸内の海の思い出を広島弁交じりに朗読。糸賀萌衣さん(同中学1年)は、友人の一言を気にしていた自分が、九十九里の海を思い浮かべて前向きになれた体験を語った。

 文芸賞は2016年創設で、旧飯岡町出身の詩人・高橋順子さんが審査委員長を務めてきた。「高橋順子を囲む会」とNPO「光と風」の共催で、同会会長の渡辺昌子さん(74)と同NPO理事長の義美さん(76)の夫妻が、同市飯岡地区の震災の記録・継承に取り組んできた。

 文芸賞休止の主因はスタッフの高齢化だ。中心メンバーは70歳前後で「膨大な事務作業の効率が落ちてきた」という。5年限定の市の補助金(年30万円)も終了。義美さんは震災10周年の際に「やり切ったという思いはある」と語っていた。

 昌子さんは20日、「立ち止まり、文芸賞のあり方をじっくり考えたい」と語った。「松山市の(坊っちゃん)文学賞は定着まで30年かかったと聞いた」とも言い、あきらめてはいない。若い後継者を探す一方、運営を行政に委ねられないか市や市教育委員会などと議論し、今年末までに結論を出すという。(高木潔)