静岡知事選、川勝氏が4選 「しっかり区切りつける」

玉木祥子 黒田壮吉
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 【静岡】知事選は20日、投開票され、無所属現職の川勝平太氏(72)が、無所属新顔で前参院議員の岩井茂樹氏(53)を破り、4選を果たした。川勝氏はリニア中央新幹線の静岡工区問題や新型コロナウイルス対策などで、県政継続の必要性を訴え、支持を集めた。岩井氏は、川勝県政の批判などを繰り広げたが、浸透しきれなかった。

 投票が終了した午後8時過ぎ、「当選確実」の一報が入ると、静岡市葵区の葵タワーに集まった支持者から拍手がわき起こった。まもなく川勝氏は妻と一緒に姿を見せ、笑顔で支援者とひじタッチ。喜びを分かち合った。

 川勝氏は壇上で花束を受け取ると、「(リニアの工事で流量減少が懸念される)南アルプスの水を守れるかどうか。これを託されたと思っており、解決する道筋をつける」と力強く語った。「4期目は起承転結の結。後継者については若い青年が育っていると感じている。ここでしっかりと区切りをつけなければならない」などと述べた。

 川勝氏は政党の推薦を求めなかったが、立憲民主と国民民主が支援し、共産も自主的支援に回った。全会一致とはならなかったものの、連合静岡の推薦も得た。自前の後援会組織を持たないなか、陣営は県議会第2会派「ふじのくに県民クラブ」の県議らが担った。3期12年で築いた高い知名度に支えられ、優位に立った。

 選挙期間中は全国知事会など公務と両立しながら、街頭演説に積極的に立った。コロナ禍を踏まえ、平日夜を中心にオンライン演説会を開いてきた。

 川勝氏は、コロナ対策で大規模接種会場の設置など実績をアピール。リニアの静岡工区をめぐって、大井川の水や南アルプスの環境を守るために、「ここで退くわけにはいかない。危機のときにリーダーは代わってはならない」と訴え、広い支持を得た。

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 静岡市葵区の岩井氏の事務所では午後8時すぎ、川勝氏の当選確実が伝えられると、詰めかけた支持者らに落胆が広がった。まもなく会場に姿を見せた岩井氏は「皆様の思いに応えられなかったのは私の実力不足。本当に申し訳ありません」と目を赤くしながら、深々と頭を下げた。

 立候補は告示まで約1カ月に迫った4月28日にずれ込んだ。4月の国政選挙の連敗などで、党本部には推薦に慎重な意見もあったが、県議や35市町の自民議員の署名を集めるなど熱意を示し、知事選では12年ぶりとなる党本部推薦を得た。茂木敏充外相や加藤勝信官房長官らの応援も得て組織戦で浸透を図った。

 告示までは川勝県政への評価を避けたが、選挙戦が進むにつれ、県政批判を展開。高齢者のワクチン接種率が全国下位にあることなどを挙げ、「市町と連携が取れていない」などと指摘。リニア工事については「現職が分断させている」とし、大井川流域住民やJR東海国交省などによる「円卓会議」を提案したが、立候補表明の遅れや知名度不足などもあり、及ばなかった。推薦を依頼した公明が自主投票になったことも響いた。(玉木祥子)

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 対立軸を鮮明にして、敵とみなした相手を批判し、求心力を高める――。いわば「川勝流」の政治手法は県政12年の推進力となる一方で、様々なあつれきを生んできた。岩井氏への票は、「川勝流」への批判票との意味合いも強い。この数字を川勝氏は、重く受け止めなければならない。

 今回の知事選ではリニア中央新幹線を争点に掲げ、自身を「巨人に立ち向かう弱者」と表現。リニア事業を推進するJR東海や国、そして自民党といった「巨人」に立ち向かう構図を演出し、選挙戦のエネルギーに変えた。一方の岩井氏は、リニア問題などで明確な対立軸を作れず、知事を代える必要性が有権者に伝わらなかった感がある。

 対話よりも対決へ進む「川勝流」は粗暴で危うい。リニア問題で県民はメリットを感じづらい面があるとはいえ、県外に「静岡県がごねている」という印象を与えかねない。静岡の県域は東西に広く、県民の思いも一様ではない。

 大切なのは、流域住民の理解を得られるようにJR東海や国と科学的・技術的な対話を重ねることだ。政争の具にしてはならず、無用な対立を生むのであれば、その失望は大きい。

 リニア以外にも、人口減やコロナ対策など県政の課題は山積している。川勝氏は出馬を表明した会見で、次の4年を起承転結の「結」に位置づけた。「川勝流」がめざす終着点はどこなのか、しっかりと示してほしい。黒田壮吉