「リンゴ日報」近く停刊か 当局の圧力で人も金も危機に

香港=奥寺淳
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 中国政府に批判的な香港紙「リンゴ日報」を発行する「壱伝媒(ネクストデジタル)」は21日、役員会を開き、同紙を停刊するか25日に正式決定することを決めた。中国共産党が導入した香港国家安全維持法国安法)で経営や編集のトップが相次ぎ逮捕され、会社の資金も凍結されていた。警察は銀行に同社への支援を禁じており、香港メディアは、運転資金が確保できなければ26日付朝刊で発行を終えると伝えている。

 高度な自治が保障された「一国二制度」のもと自由な言論が認められてきた香港の報道機関が、昨年6月施行の国安法を用いた当局の圧力で停刊にまで追い込まれつつある。複数の香港メディアは、リンゴ日報内部の情報として、新聞を停刊することになれば、デジタル版によるニュース配信も終了すると伝えた。

 香港警察は17日、同紙が掲載した約30本の記事が、外国に中国や香港政府への制裁を求める内容だったとして強制捜査に着手。ネクストデジタル最高経営責任者(CEO)の張剣虹氏や、リンゴ日報編集長の羅偉光氏ら幹部5人を、国安法違反の疑いで逮捕した。

 またリンゴ日報本社や印刷会社など3社も18日、国安法違反の罪で起訴され、3社の資産約1800万香港ドル(約2億5500万円)も凍結された。同紙創業者の黎智英(ジミー・ライ)氏=未許可デモ組織などの罪で実刑判決=が保有する計4億香港ドル(約57億円)ともいわれる資産も、5月に凍結されていた。

 警察は香港の銀行7行に対し、3社の資金を動かすことを禁じ、リンゴ日報を助けるいかなる行為も国安法に違反すると警告。リンゴ日報は銀行から運転資金を調達するのが難しくなり、6月の給与も支払えない恐れが強まっていた。

 リンゴ日報によると、壱伝媒は香港政府に凍結された資産の一部解除を申請する。その結果を受けて25日に再び役員会を開き、停刊するかを正式に決める。

 リンゴ日報は、実業家の黎氏が1995年に創刊。97年に香港が中国に返還されて以降、香港メディアが中国資本を受け入れて中国化が進むなか、同紙は独立経営を維持。香港の主要メディアのなかで、正面から中国共産党を批判するほぼ唯一の存在だった。(香港=奥寺淳)