遠のくリニア開業 静岡知事選 県内着工認めぬ現職再選

和田翔太、黒田壮吉、初見翔
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 20日投開票された静岡県知事選で、現職の川勝平太氏(72)が4選を決め、リニア中央新幹線の開業がますます見通せなくなった。県内での着工に反対する川勝氏は、その根拠としてきた環境への影響を和らげる対策などを一層強い姿勢で求めるとみられ、JR東海や国は厳しい対応を迫られそうだ。

 「水量、水質、生態系、土捨て場、(流域住民のために)そういったものを考えていないのは言語道断だ」。当選から一夜明けた21日の記者会見。川勝氏はこう述べ、引き続きJR東海に環境対策などの徹底を求めていく姿勢を示した。

 同社が完成を急ぐリニア新幹線は品川―名古屋間を最短40分、品川―新大阪間を同67分で結ぶ計画だ。しかし、そのルート上にある南アルプスの静岡工区(8・9キロ)について、トンネル工事で県中央を流れる大井川の水量が減ることなどを懸念し、川勝氏が反対を表明。着工許可を得られず、当初予定していた2027年の品川―名古屋間の開業は絶望的とみられている。昨年6月にはJR東海の金子慎社長が川勝氏との会談で許可を求めたが、これも物別れに終わった。

 今回の知事選では、川勝氏の県政運営をたびたび批判してきた自民党県連が自民党参院議員で国土交通副大臣だった岩井茂樹氏(53)を擁立。岩井氏は「リニア推進派ではない。地元住民の理解や協力がない限り、着工できない」と反対派に配慮しつつも、流域住民やJR東海ら関係者による「円卓会議」の設置など、膠着(こうちゃく)状態を打開する提案もしていた。

 それだけに、JR東海では岩井氏当選への期待も強かった。同社幹部は「少なくとも同じ土俵で話ができる知事になれば(着工に向けた)道が開ける可能性があった」と落胆した。

 国も厳しい立場に追い込まれる。リニア新幹線は、16年に当時の安倍政権財政投融資で3兆円をJR東海に貸し付けるなど、国も後押ししてきた。岩井氏は知事選の直前まで国交副大臣を務めていただけに、「どうしても『静岡県国交省』という構図になる。川勝氏が勝てばますます事態が膠着(こうちゃく)しかねない」(国交省幹部)との声もあった。

 静岡県の問題以外にも、リニア建設には課題が山積している。当初5・5兆円と見積もっていた品川―名古屋間の建設費が、今年4月になって追加の地震対策などで7兆円まで増えることが判明。首都圏などで計50キロ以上計画する大深度地下の工事をめぐって、同じ工法を用いた東日本高速道路東京都調布市で陥没事故を起こしたことも逆風になっている。

 今後は、JR東海静岡県の仲裁のために国交省が設けた有識者会議で県の理解をどこまで得られるかが焦点になる。国交省幹部は21日、「会議を粛々と進めるだけだ」と話したが、静岡県は水資源への影響評価など40以上の項目について検討を求めており、未回答のものもまだ多い。

 「南アルプスの水や自然環境を守れるか。これを託されたと思っている」。20日夜、そう強調した川勝氏の理解を得るのは容易ではなく、議論の長期化は避けられそうにない。(和田翔太、黒田壮吉、初見翔)