「持病で行くの不安。でも…」 どうする五輪チケット

矢島大輔
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東京五輪・パラリンピックに向けた5者協議で会談する(左から)東京都の小池百合子知事、大会組織委員会の橋本聖子会長、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長、丸川珠代五輪担当相=2021年6月21日午後4時8分、東京都中央区の晴海トリトン、代表撮影
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 開幕まで1カ月に迫り、伝えられた方針は「1万人までで無観客もあり得る」「再抽選の実施」だった。東京五輪の観客数が21日、5者協議で合意された。チケットを購入済みの人たちは不安な思いを抱く。

 「大会まで1カ月でようやく。スピード感がない。誰も責任をとりたくないんやろな」。大阪府高槻市に住む派遣社員の男性(57)は21日夕、観客数の決定を伝えるテレビニュースを見ながら話した。

 7月末にさいたま市であるバスケットボールの試合を妻(54)と2人分予約し、2万円を払った。いまだチケットは届かない。ホテルや新幹線の予約もできない。

 主催者側から3月に届いたメールには「4月中に方向性が示される予定ですので、ご案内させて頂きます」とあった。「コロナ感染の影響により組織委が観戦の機会を提供できなくなった場合は、別途払い戻しを実施」ともあった。

 それから3カ月、待たされた。「ワクワク感がどんどんなくなっていった」

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「観客数の上限は4月中に示される予定」と知らせるチケット保有者へのメール。3月26日に届いたという=読者提供

 スポーツ観戦が好きだ。7年前から腎臓の病気で週3回の人工透析治療をしており、「海外で五輪を見るのは無理だから」と東京五輪チケットに応募した。2回目の抽選で当たった。

 ホテルを予約し、「準備万端整っていた」が昨春、1年延期になった。その後も不安な時が続いた。今春に新型コロナの「第4波」が来た時は、妻は「もう中止でええやん」と言った。それでも、男性は「テレビでは味わえない感動を味わいたい」とキャンセルはしなかった。

 持病で、コロナに感染すると重症化するリスクが高い。言い出しづらくて、かかりつけの医師には観戦について相談できていない。「行くのも不安、でも、みたいな気持ち。再抽選で落ちなかったら行きたい」

 大津市の女性(52)は、子ども3人と茨城県でサッカーの試合を観戦する予定だった。上の息子2人はサッカーが好き。一昨年の今ごろに抽選でチケットが当たった時、「すげえ」と喜んだが、今はその時の高揚感はない。「できるならキャンセルしたい」

行くのは不安、でも

 コロナの流行後、旅行は控え、東京に住む姉の家族とは会えなくなった。第4波で息子のサッカーチームは対外試合が禁じられ、集合練習も少なくなった。

 「1万人まで」と言い、有観客で開催することに違和感がぬぐえない。「長距離の移動や宿泊、外食をともなうのに」

 納得できる説明がなされていないとも感じる。「誠実さが伝わらない。主催者のどうしてもやりたい思いと、私たちの気持ちがかけ離れてしまっている」(矢島大輔)

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大阪府高槻市の男性に15日に届いた東京五輪のチケットに関するメールの文面。大会の観客上限数が示されず、チケット発送を見合わせていることを伝えている