就活中、自分見つめ直した 高齢者と子どもを続けて保護

福田祥史
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 「おかしいなあ」

 茨城県取手市の粟田律子さん(21)は、歩道に立っている高齢の女性の姿に違和感を覚えた。4月17日夕刻。車を運転して市内を走っていた。

 雨が降っていた。女性は傘を持っているのに差していなかった。片手を挙げて、車を止めたがっているように見えた。一度は通り過ぎたが、迂回(うかい)して女性のもとに戻り、「大丈夫ですか」と声をかけた。

 女性は「寒い」と口にした。その姿を見て、粟田さんはドアを開けて乗るように促した。住所を尋ねてみたが分からず、近くの交番まで連れて行った。女性は市内に住む90歳で、帰り道がわからなくなっていた。

 実をいうと、女性に気づいたとき、声をかけるかどうか迷った。だが、そのままやり過ごして後悔し、もやもやした気持ちが続くのは嫌だった。実際にそのような経験をしたことがあった。そう思うと同時に、ハンドルを切って戻り始めていた。

 粟田さんは就職活動中の大学4年生。その日は会社説明会からの帰りだった。就活の中で改めて自分を見つめ直した。こうした声かけも「当たり前にできるようになりたい」と思っていた。母には「人の気持ちを考えて行動しなさい」と教わった。

泣く男の子「ママがいなくなっちゃった」

 それからちょうど10日後の4月27日午後7時前、粟田さんが自宅近くを歩いていると、歩道の真ん中にひとり立って泣いている幼い男の子がいた。もう暗く、辺りに人はいなかった。

 「どうしたの」と聞くと、「ママがいなくなっちゃった」。外出した母を追って自宅を出て、帰れなくなった5歳児だった。家まで送っていく途中、110番通報を受けて男児を捜していた警察官に出会い、後を託した。

 今月10日、2人の安全を守ったとして、粟田さんに取手署から感謝状が贈られた。「初めて社会の力になれたなと思う。勇気を出して行動して良かった。自信にもつながった」と振り返った粟田さんに、福地健一郎署長は「前向きの一歩が出るか出ないかは、社会に出ると大きな違い。今後も迷ったら積極果敢。前に出た方がいい」とエールを送った。(福田祥史)