忖度や従順は美徳じゃない 山口香さんからスポーツ村へ

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聞き手・塩谷耕吾、笠井正基
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 物言わぬスポーツ界において、日本オリンピック委員会(JOC)理事としてただ一人、東京五輪開催への懸念を直言してきたのが、山口香さんだ。東京五輪の開幕まで1カ月。10年の任期を終えて、25日に退任する前に聞いた。なぜ、「出る杭」であり続けたのですか。そこから見えてきた日本社会とはなんですか。

10年務めたJOC理事 五輪を議論したかったのに反応がなかった

 ――中止や延期を求める声が多いなか、開幕に向けて観客の上限などが次々と決まっていきます。一連の流れをどうみていますか。

 「五輪って政治家が決めるものなんだ、と。観客をどうするのかを議論してきたのは、菅(義偉)さん、小池(百合子)さん、橋本(聖子)さん……と、見えるのは政治家の顔でした。スポーツ界の人はどこにいたのでしょう。選手は、聞かれたら『この状況で五輪をやらせていただけるなら、無観客で文句ありません』と言うと思いますよ、聞かれないだけで。いかにも選手が有観客を希望したかのように、都合のよいときだけ利用されています」

 「リスクがある状況で五輪をやるにあたって国民への誠意を示す最後の切り札が無観客でした。国はコロナ対策において国民の良識に頼り、お願いベースで乗り切ってきました。その国民の努力と我慢に歩み寄る提案をすべきです」

 ――政府やJOCは国民の理解を得ようとしていなかった?

 「国民の声と向き合う姿勢が感じられませんでした。不安や問いに答えない、やると決めたらやる、というのは独裁に近いと思います。『安心安全』といい続けて物事が進む、そんな世の中は怖くないですか」

 「五輪は平和の祭典といわれますが、五輪をやったら世界が平和になるわけではない。平和に向かうために、意見が異なる人とも対話をして落としどころを探っていく。五輪が国民を置き去りにしたイベントになれば、そもそも誰のための五輪なのか」

 ――もし山口さんがJOC会長なら、どう対処しましたか?

「五輪の開催意義は?」「意見は黙殺された?」―― 記事の後半では男主体というスポーツ界が抱える矛盾、近くなった政治との距離について語ってもらいます。

 「選手時代から今に至るまで…

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