壁壊れ柱傾き…英彦山の上宮が倒壊の危機

渡辺純子
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 福岡と大分の県境にそびえる国指定史跡の霊山、英彦山(ひこさん、1199メートル)の頂上にある上宮が倒壊しそうになっている。災害のたびに傷み、昨秋の台風が追い打ちをかけた。社殿は資材を運びこむための車道から遠く離れており、修復は簡単ではない。

 英彦山中腹の参拝客が集まる奉幣殿(ほうへいでん)から、更に登山道を歩くこと約2時間。「歴史と信仰の要」とされる大きな社殿は、壁がはがれ、柱は傾き、屋根もあちこち飛ばされていた。「これはひどい」。3月下旬、視察した九州大の加藤悠希准教授(建築史)ら6人は、ため息をついた。

 上宮は拝殿と宝殿からなり、計約270平方メートル。「建物全体が傾いている。拝殿は一度解体してやり直さないといけない」。英彦山がある福岡県添田町の文化財専門官、岩本教之さんが説明した。

 宝殿の中に入ると、太い柱や梁(はり)、豪華な彫刻が江戸時代そのままの姿を残していた。一行は胸をなで下ろしつつ、「早く外を直さないと中も傷んでしまう」と危機感を募らせた。

 英彦山日本三大修験道場として知られる。岩本さんや英彦山神宮の高千穂秀敏宮司(70)らによると、神宮の本社にあたる上宮は平安時代までに創建された。今の社殿は1840年代に佐賀藩主の鍋島斉正が建てたとされる。

 だが、1991年の台風19号で防風林が倒れ、台風や豪雨のたびに壁や屋根が傷んだ。板やシートで応急処置はしたが、昨秋の台風で風雨が中を吹き抜け、柱まで傾いた。倒壊のおそれがあるとして、3月末に立ち入り禁止になった。

 英彦山は「我が国の修験・仏教・神道の信仰の在り方を考える上で重要」として17年、国史跡に指定された。上宮の保存修理は国などの補助を得て宗教法人・英彦山神宮が行う。

 だが、車道から離れた上宮を修復するには、資材をヘリコプターで運んだり、モノレールを敷いたりしなければならない。神宮が経費を見積もると6億円を超えた。状況次第で10億円を超すおそれもある。宮大工の技術をもった業者を長期間確保するのも難しい。

 中宮は91年の台風で崩れ、小さなほこらにした。宮司は一時、上宮もそうしようかと考えたというが、「あれほど高い山の頂上に木造のお社が建っているのは他にない」と、修復に向けて寄付を集め始めた。息子で禰宜(ねぎ)の有昭さん(39)も「上宮は英彦山神宮の御本社。守りたい」と話す。(渡辺純子)