関学大初の女性主務は甲子園経験者、神宮でもベンチ入り

高橋健人
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スポーツ好奇心

 野球の全日本大学選手権に28年ぶりに出場を果たし、8強入りした関学大。東京・神宮球場のベンチには、120年を超える部の歴史で、初めて誕生した女性主務の姿があった。大学野球で珍しい女性の主務であるだけでなく、高校時代には甲子園を経験した「球歴」の持ち主だ。

 4年生の川俣京香さん(21)。全日本大学選手権では記録員を務め、選手の好プレーに拍手を送り、マスク越しにエールを送っていた。

 チームは関西学生連盟のリーグ戦で、2015年から3位以内に入ることがなかった。だが、この春はエース左腕の黒原拓未(4年)を中心に投手力を前面に押し出し、他の5校すべてから勝ち点を奪う「完全優勝」を達成。全日本大学選手権の出場権を獲得すると、28年ぶりの大舞台でも堂々の戦いぶりを見せた。松山大との初戦を難なく突破すると、国際武道大との2回戦では3点を追った終盤に一挙5得点を挙げて逆転勝ち。優勝した慶大に準々決勝で敗れたものの、3―5と互角に渡り合った。

 「感動しました。テレビでしか見たことがなかった神宮球場で、メンバーが楽しそうに野球をしていたので」

 関学大は今年で創部122年。マネジャーとして入部した男子が、上級生が引退して新チームに切り替わるたびに、副務、主務と役職を変えていくのが恒例だった。だが、川俣さんの学年のマネジャーは女子4人だけだった。川俣さんは悩んだ末に「精神力がいる仕事だからこそ、楽観的な自分が適役だろう」と、主務のアシスタント的役割である副務をまずは引き受けたという。OBで、全日本大学選手権に前回出場した際のメンバーだった本荘雅章監督(50)も快く受け入れた。

 マネジャーの業務は会計や道具管理といったチーム内のことで完結するが、主務は外部との窓口役。練習試合の調整やバス、ホテルの手配、報道対応など業務は多岐にわたる。特に昨年からは新型コロナウイルスの対応におわれている。部の感染対策ガイドラインに「外食は個食に努める」「ミーティングは可能な限りオンライン」などの項目を追加。約200人の部員が不要な外出をしないよう気を配り、練習時間を確保するために何度も大学に掛け合った。

 「甲子園にも、神宮にも出たら、格好良くないですか?」

 副務だった昨年2月、川俣さんは当時の主将との会話の中でそう言ってのけた。福岡県立東筑高出身。3年生だった17年夏、マネジャーを務めていた野球部が県内の強豪私学を破って全国高校選手権福岡大会で優勝した。春夏通じてチーム19年ぶりの甲子園でベンチ入りし、「あんなに広くてきれいな球場は初めて」だったという忘れられない体験をしていたからだ。

 その場に居合わせた現主将の杉園大樹(4年)は、冗談だと受け止めたという。だが、夢のような話が現実になり、「本当にすごい。何か持っているんでしょうね。人懐っこい性格だからチームもうまく回っている」と感謝する。下級生と上級生の円滑なコミュニケーションや、部の一体感を高めるうえで欠かせない潤滑油のような存在だという。

 チームは秋のリーグ戦での優勝をめざし、21日から練習を再開した。川俣さんは「4年生がリーダーシップを発揮してくれたおかげで全日本までたどり着けた。もう全部の運気を使い果たした気もしますが、まだ残っているのなら全てをチームに還元したい」と笑う。(高橋健人)