ノムさんの教え、奇襲は快感だけど…29日に追悼試合

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稲崎航一
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 ヒットエンドランのサインが出たとき、打者がすべきことは何か。

 阪神の監督をしていた野村克也さんが、ぼそりと報道陣に問いかけたことがある。ある記者が「ゴロを打つことですか」と答えたら、「違う」と返ってきた。

 「ヒットを打つんや」

 ヒットを打つのが難しいから足を使うのではないのか。最低限ゴロを転がせば走者は進められるのではないか。第一、貧打の阪神打線ではろくにヒットを打てないだろう……。心の中で疑問が湧いたが、話はそこで終わっていたような記憶がある。

 わたしは2001年に野村監督時代の阪神を担当し、その後、07~09年と野村監督が率いる楽天担当となり、疑問が解けた。

エンドラン成功の秘訣

 野村楽天は、ここぞの場面でヒットエンドランを成功させた。例えば一回無死一塁で走者は渡辺直人。相手は送りバントだと思って前進守備を敷いてきた。打者高須洋介は初球、ガツンとエンドラン。三遊間を鮮やかに抜いた。

 当時の橋上秀樹ヘッドコーチは言っていた。「バントシフトを敷けば、投手もストライクを投げてくる。サインには根拠がある」。「ヒットを打つんや」というのは、打ちやすい状況を作り、利用するということだったのだ。

 人気野球番組の「球辞苑」(NHK・BS1)で21日、「ヒットエンドラン」をテーマにした回が再放送されていた。

 番組で、橋上さんがさらに詳しく解説していた。走者がスタートを切ったとき、二塁手と遊撃手どちらが二塁ベースに入るのか。事前に走者が偽走して傾向をつかみ、打球方向を決めておく。その上で、ゴロになりやすい球種のストライクが来る確率が高いカウントで――。

 これらの条件が整って初めてサインを出す。

 野村監督はこうも言っていた。「ヒットエンドランは奇襲。決まると快感になって多用したくなるが、たまにやるから決まるんや」と。

 決めるのがうまければ、当然、仕掛けられるタイミングも分かる。相手のヒットエンドランを見破って投球を外し、走者を刺したのを何度も見た。これも「快感」だった。

■教え子たちの活躍を……

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