水害の保険料、リスクにより地域差設定へ 23年度以降

山下裕志
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 台風などの水害に備える損害保険について、大手損保各社は地域別の保険料を導入する方針だ。今は基本的に一律だが、浸水土砂崩れなどのリスクの大小を保険料に反映させ、顧客の不公平感を和らげる。ただ、地域によって大幅値上げになると加入をためらう人も現れかねず、保険料のバランスをどう取るかが焦点になる。

 金融庁の有識者会議が25日、保険料の地域差のあり方について議論を始め、年内にも基本的な考え方をまとめる。これを受けて業界団体の損害保険料率算出機構が保険料算出の目安を示す見通し。損保各社が実際に保険料に差をつけるのは2023年度以降になりそうだ。

 水災補償は台風や高潮で住宅や家財が浸水したり、壊れたりしたときに保険金が出る。水災分の保険料を火災保険に上乗せするのが一般的だ。例えば、東京の木造住宅について保険金額1500万円の契約をある大手損保で結ぶと、保険料は水災補償ありが年約2万円で、なしが約1万円。差の約1万円が水災分にあたる。竜巻や突風に備えた風災補償は地域のリスクに応じ保険料が違うのに対し、水災分の保険料は全国一律だ。

 損保各社が主な風水災で支払った保険金は19年度まで2年続けて1兆円を超えた。火災保険料は今後も値上げが続く見通しで家計の負担が増し、保険料の公正さへの関心は高い。地震保険も同様に近年値上げが続いてきたが、都道府県別の保険料が設定されている。

 水災リスクは河川からの距離や土地の高低で差がある。一律保険料だと、低リスクの顧客が高リスクの人の保険料を実質的に一部肩代わりすることにもなる。値上げが続けば、不公平感が強まりかねない。

 一方で、保険料の差が広がりすぎると、値上げ地域で加入しない人が増える恐れもある。大手損保幹部は「単純にリスクに応じて保険料を設定すると差が広がりすぎる。河川近くに住んでいる人はリスクが高いからといって、すぐに引っ越せない」と指摘。別の大手幹部は「家は最大の財産。火災保険に入れない人を出してはいけない」と話す。

 大手損保に先駆け、楽天損害保険は20年4月に独自の地域差を設けた。ハザードマップなどに基づき水災リスクを四つに分け、保険料全体の差はリスクに応じて約1・5倍。想定される被害リスクの差より小幅にしたという。西山光宣・商品開発部長は「保険料は(公共性の高い)水道料金や電気料金に近い。大きな差をつけることには抵抗感があった」と話す。

 大手は企業向け保険では差を設けているが、圧倒的に多い個人向けは踏み込めずにいた。顧客の不公平感をなくしつつ、保険の基本理念の相互扶助をどう守るかの議論が本格化する。(山下裕志)