ワクチン供給支える冷凍庫 お荷物事業に訪れた転機は

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長橋亮文
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 金属洋食器で有名なものづくりの街・新潟県燕市に本社を置く家電メーカー「ツインバード工業」3代目社長の野水重明(55)は昨夏、厚生労働省に呼び出された。「コロナワクチンを運ぶ冷凍庫を5千台製造できませんか。納期は厳守です。すぐに回答してください」

 生産体制は整うのか、資金繰りは可能なのか、もし冷凍庫に故障が相次いだらワクチンが無駄に――。やっと黒字の「お荷物事業」のため受注したい気持ちは強かったが即断はできず、地元に帰って緊急役員会議を招集した。「人の命を救える」「ウルトラマンみたいな社会貢献になりますよ」。幹部の前向きな声に押され、数日後に再び厚労省に足を運んだ。「ぜひ引き受けさせてください」

 東京・日本橋の支社に戻る地下鉄のなかで営業担当の役員に「これから苦労をかけますね」と小さな声で話しかけると、役員は「投資を決めた先代社長が喜んでくれますね」と答えた。うっすらと涙を浮かべていた。

 「他社にないオンリーワンの技術に投資しないと未来はない」。20年以上前、シャープで副社長を務め液晶開発を手がけた故佐々木正氏の助言が「苦難」の始まりだった。技術部門が佐々木氏の指導を受け、冷却装置の開発を勧められた。筒内のピストン運動でヘリウムガスを膨張・圧縮させ冷却する技術だ。先代社長の野水重勝(79)が賛同し、研究開発が始まった。2002年、量産化にこぎ着け専用工場も建てた。だが需要がどこにあるのか、つかめない。

 03年2月期決算から会社は5期連続の最終赤字。役員会では「事業をやめろ」と主張する幹部も。しかし、先代社長は自ら決断した投資でもあり撤退はしなかった。「オーナー社長でなければ、事業は潰されただろう」と銀行出身の経営幹部は振り返る。

 風向きが変わったのは、11…

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