アート界揺るがすNFT デジタルの「唯一性」とは

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神里達博の月刊安心新聞+

 実は最近、IT(情報技術)の世界ではちょっとした「祭り」が起きている。その主役は「非代替性トークン(NFT)」というものだ。これは何だろうか。まずは、この技術が生まれた経緯を確認してみよう。

 近頃のオンラインゲームには、プレーヤーが仮想空間の中でさまざまな「道具」や「カード」を集めたり、仮想的な「生き物」を育成したりして楽しむタイプのものがある。言わば、ゲームの中だけで「アイテム」を保有しているわけだ。しかし、このようなデータを外に持ち出して、市場で取引できるようにしたら面白い、と考えた人がいた。

 それを実現するには、それぞれのゲームのシステム内部ではなく、外部の、いわば公共的なネット空間にアイテムの保有権を「登記」できるようにすることが必要だ。そのためにはどんな方法があるだろうか。

 ここで登場するのが、以前、本コラムでもとりあげた「ブロックチェーン」である。この技術の核心は、暗号技術で守られた、誰でもアクセスできる「台帳」である。暗号資産の「ビットコイン」も同じ方法で実装されている。このテクノロジーを使えばゲーム内のアイテムを、ビットコインの売買と同じように、外部で取引することも可能になるのだ。

 ではNFTはビットコインと何が違うのか。それは「非代替性(Non Fungible)」という点である。たとえば千円札には通し番号がついているが、私たちは普通、それを気にすることなく、どれも同じ「代替可能なお札」として使っている。ビットコインなどの暗号資産も、基本的には同様である。

 だが、それでは都合が悪い場合もある。例えば、自分の育て方によってゲーム内の「ペット」に個性が生じるように設計されているゲームがある。その場合、自分が育てた仮想空間の「生き物」は、他の人の育てたものとは全く異なる存在であろう。そのような個別性のあるデータの保有権を、ビットコインのように公共的かつデジタル的に流通できるようにしたのがNFTなのである。

 これだけならばゲームの世界…

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