会社員、休日にビールづくり 300万円かけ醸造所開設

松永佳伸
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 製薬会社で営業担当として働きながら岐阜市内に醸造所を構え、クラフトビールづくりに励む男性がいる。製造免許の交付を受けた矢先に新型コロナウイルスの「第4波」が押し寄せたため、1カ月以上も休業したが、今月中旬、「まん延防止等重点措置」の解除を見越して仕込みを再開した。

 「岐阜麦酒醸造」は、飲食店などが入る岐阜市正木のマンション1階にある。パン屋だった約50平方メートルを改修した醸造所には、業務用の冷蔵庫やガスコンロ、200リットルの寸胴(ずんどう)鍋、発酵タンクが所狭しと並ぶ。

 愛知県瀬戸市の製薬会社で医薬情報担当者として働く平塚悟さん(40)は、週末の早朝から一人黙々とビールづくりに汗を流す。

 2019年、勤め先が社員の副業を認め、推奨する姿勢を打ち出した。平塚さんは「仕事とは別に、地域とつながる仕事ができないか」と考えた。地域の食材を使うクラフトビールづくりは、岐阜の魅力を広めることにもつながる。

 専門書を読んで勉強し、島根県醸造所で2週間の研修を受けた。1年半ほどの準備期間に温度管理や材料の配合の仕方などを身につけた。

 醸造所の開設には約300万円を投じた。昨年6月、発泡酒の製造に必要な免許を申請し、今年3月に交付された。一度に仕込めるのは150リットル程度。100種類以上あるビールの種類から、日本人にもなじみのあるペールエールやIPA、ウィットビールなど5種類の製造を開始した。発酵期間を経て、完成までに2週間ほどかかる。

 作業は休日に限られ、10回ほど仕込んだところで新型コロナの「第4波」の感染が拡大。参加を予定していたイベントは相次いで中止になり、関心を示していた飲食店も「重点措置」で酒類の提供を自粛し、いきなり在庫を抱えることになった。「これからという時だったので本当に痛かった。出ばなをくじかれた形だが、あきらめるつもりはなかった」と平塚さん。

 県内の新規感染者も減少傾向となり、重点措置の期限も迫ってきた今月12日、約1カ月ぶりに仕込みを再開。7月以降の需要に備えることにした。

 今回はベルジャンスタイルの白ビールを製造。オレンジピールの代わりに関市特産のユズを使った。今後は干し柿なども試すことにしている。

 品質が安定するまではドイツベルギー、イギリスなどから輸入した麦を配合して製造するが、将来は国産の麦に切り替えるという。また、ビールの搾りかすは、実家に運んで堆肥(たいひ)化し、再利用する。

 当面は、県内のイベントでの提供と、ビール樽(だる)(10、15、20リットル)での卸売りのみの取り扱いだが、いずれは缶や瓶での提供も視野に入れている。

 平塚さんは「長良川金華山を眺めながら、屋外で味わうようなすっきりとした味と香り高いビールを目指したい。焦らず地道にやっていきます」と意気込む。(松永佳伸)