「ファスト映画」初の摘発 無断で短く、プロも雇って…

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三井新 吉沢英将 赤田康和
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 映画を無断で短く編集した「ファスト映画」と呼ばれる動画を「YouTube」に投稿したとして、20~40代の男女3人が著作権法違反容疑で逮捕された。昨春からネット上に広がったファスト映画。被害額は900億円超と推計される。巣ごもり生活の中、思わず視聴した人もいるかもしれない。見ることは法に触れないのか。ファスト映画を追う弁護士に、その手口や法的問題を詳しく聞いた。

宮城県警、全国初の摘発

 宮城県警は23日、札幌市などの元ユーチューバー3人を著作権法違反の疑いで逮捕した。県警によると、ファスト映画の投稿者の摘発は全国で初めてだ。

 県警によると、3人の逮捕容疑は、昨年6~7月、著作権者の許諾を得ずに、「冷たい熱帯魚」や「アイアムアヒーロー」などの邦画5作品をそれぞれ約10分に編集しナレーションをつけて投稿したというもの。いずれも容疑を大筋で認めているという。

 ユーチューブに3人が開設したチャンネルは昨年5月に登録され、少なくとも80本のファスト映画が投稿されていた。県警はファスト映画の投稿で多額の広告収入を得ていたとみて、解明を進める。

 ファスト映画とは、映画の動画や静止画を無断で編集し、字幕やナレーションをつけ、あらすじを紹介する10分程度の動画だ。

 たとえば、記者がユーチューブで見つけたのは、地球規模の災害を描いた「デイ・アフター・トゥモロー」のファスト映画。

 ニューヨークが凍りつく有名なシーンで始まった。静止画が次々と入れ替わり、竜巻や水害が襲う都市で登場人物が苦闘する様子を伝える。あらすじはナレーションとテロップで説明され、「印象的な描写が多く鳥肌が止まらない作品」といった感想も語られた。

 映画は2時間超だが、約11分に圧縮されていた。再生回数は約80万回だった。

 映画会社や出版社などでつくるコンテンツ海外流通促進機構(CODA)によると、ファスト映画は昨春からユーチューブで確認されるようになった。

 CODAの今月の調査によると、少なくとも55アカウントがハリウッド映画や人気の邦画など計2100本の動画を投稿していた。合計の再生回数は約4億7700万回で、CODAは被害額を956億円と推計した。

 ファスト映画の問題を早期から調べ、CODAとともに被害の調査をしてきた中島博之弁護士によると、ファスト映画制作の手口はこんな感じだ――。

プロがナレーション?

 映画本編の映像を何らかの方…

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    伊藤大地
    (朝日新聞デジタル編集長)
    2021年6月25日13時55分 投稿
    【視点】

    投稿者に問題があったのは当然というのを前提に、私が注目したいのは「短い映画を求める消費者心理」です。インターネット以前と以後で最も違うのは、消費可能な情報量です。かつてはテレビ新聞雑誌くらいしか日常的に触れられなかったのが、今は無限に近い情

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