才能にありがとう スクエア伊東たけし、和泉宏隆を悼む

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聞き手・真野啓太
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 インストゥルメンタル・バンド、T―SQUARE(以下、スクエア)は、メンバーが入れ替わりながらも、40年以上にわたって精力的に作曲とライブを続けてきた。

 草創期からバンドの顔であるサックス奏者、伊東たけしさんは今年、盟友の死と相棒の脱退に直面している。二つの別離に揺れる、胸の内を聞いた。

 いとう・たけし 1954年生まれ、福岡市出身。大学時代からソロのサックス奏者として活躍。スクエアの前身「THE SQUARE」に1977年に加入。一度はバンドを離れたが、2000年に復帰した。リーダーの安藤正容さんが参加する最後のアルバム「FLY!FLY!FLY!」を引っさげたツアー中。6月26日にはなんばHatch(大阪)で、7月23日にはZepp Fukuoka(福岡)で演奏する。7~8月には大阪と東京で、安藤さんの脱退記念ライブが計画されている。

 4月26日、元メンバーの和泉宏隆さん(ピアノ・キーボード)が急逝した。急性心不全だった。

 「うちのボス(事務所社長)から電話がかかってきて、『大変だ、和泉が死んじゃった』って。え、と思った」

 和泉さんは1982~1998年にバンドに在籍。脱退後はソロや他のグループで活動していたが、伊東さんらスクエアの新旧メンバーと共演することもあり、訃報(ふほう)の数週間前にもセッションしたばかりだった。

 「まだ自分の中で、グジュグジュしていますね。みんなとその話をしていいものなのか、黙っていた方がいいのか。それぞれの思いがあるから。でも口に出すと、やっぱ涙が出そうになりますからね。家族以上に、家族みたいなところがあるじゃないですか」

和泉さんとの思い出の曲

 和泉さんが在籍したのはバンドの黄金期と呼ばれる時期だ。F―1のテーマとして知られる「TRUTH」や、吹奏楽でも親しまれる「TAKARAJIMA」など、バンドの代名詞となるアップテンポな曲を発表した。ただ伊東さんが忘れられないのは、和泉さんと奏でたバラードだという。

 「『和泉さんのピアノとたけしさんのサックスじゃないと、あのバラードの、あの音は出せませんよね』と言われるものができあがっている。『FORGOTTEN SAGA』とか、『TWILIGHT IN UPPER WEST』とか、そのへんがそうですね」

 他のピアニストと演奏して初めて、和泉さんのピアノの音色は、替えがきかないものだったと気づいたという。

 「和泉のピアノっていうのは独特のあたたかみ、ゴージャスさがある。サウンドが豊かになるんですよね。人を包み込むような音色というのは、同じピアノでも、弾く人によって全然違うんだなって、すごく思います。あたたかいピアノと俺のサックスの音色が、それ以上の何かを作り出すんですよね。彼のそういう存在に対して、才能に対して、本当にありがとうって。心の中でね、いつも思っているんですけど」

 5月から新アルバムをひっさげてスタートしたツアーでも、和泉さんとの思い出が詰まった曲を披露する。

 「これはヤバいと思うよ。イントロが出た瞬間に、俺たちもそうだけど、ファンの子たちだって、その音が、そのイントロが出た瞬間に、『ウーッ』ときちゃうと思いますよ。だから本当は、やりたくないんだよね。オープニングのMCも、どうしようか。辞めるだけなら、馬鹿野郎とか言って、始められるけど。死んじゃったらね。困っちゃいますよ。本当に」

 ひとたびステージからおりると、ちょっとしたことでけんかすることもあったという。

 「和泉君って呼ぶと、怒るん…

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