妊娠中のコロナワクチンは? 推奨判断をWHOが改訂

酒井健司
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 福岡市では64歳以下の方に対しても6月30日からワクチン接種券が送付されます。職域接種でワクチンを受ける機会のある方もいらっしゃるでしょう。ワクチン接種対象が若年者に広がることで、妊娠している人も接種対象になります。ワクチンの臨床試験には通常、妊娠女性は参加できないため、効果や安全性のデータは限られていました。一方で妊娠中に新型コロナウイルスに感染すると早産や重症化のリスクが高いことが知られています。妊娠女性がワクチンを接種するかどうかは悩ましいところです。

 日本で医療従事者に対するワクチン接種がはじまろうかという2月の段階で、当コラムでは、妊娠女性に対するワクチン接種の推奨の状況について書きました。その後、ファイザー製もしくはモデルナ製ワクチンの妊娠女性に対するWHOの推奨は、「新型コロナに曝露(ばくろ)するリスクの高い医療従事者などの場合を除き、現時点では妊娠女性にはワクチン接種を推奨しない」から「新型コロナに曝露するリスクが高い医療従事者や重症化しやすい併存疾患を持つ妊娠女性は、医師と相談の上、ワクチンを接種してもよい」に改定されました。

 現時点で一番新しい2021年6月15日付のWHOの文書を参照したところ「妊娠女性へのワクチン接種のメリットが潜在的なリスクを上回る場合にはワクチン接種を推奨する」とありました。いずれも似たような内容に思われるかもしれませんが、基本的には推奨しないという文言が推奨するという方向に変わっているのが読み取れます。また、ワクチンによって得られた抗体が臍帯血(さいたいけつ)や母乳を通じて赤ちゃんを新型コロナから守る可能性についても言及されています。ワクチンによる免疫が赤ちゃんを守る現象は、これまでも麻疹ワクチンや百日ぜきワクチンでよく知られています。

 推奨度合いが変化したのは、広くワクチンが使用され妊娠女性に対する効果や安全性のデータが得られたからです。発熱や倦怠(けんたい)感といった副作用は他の成人女性と同程度ありますが、胎児や新生児に対する悪影響はいまのところ報告されていません。データが積みあがっていくに従い推奨度合いが変わるのは普通のことです。データの収集は続けられていますので、今後、推奨度合いが変わる可能性はあります。

 日本産科婦人科学会など3学会の提言でも、「すでに多くの接種経験のある海外の妊婦に対するワクチン接種に関する情報では、妊娠初期を含め妊婦さんとおなかの赤ちゃん双方を守るとされています。また、お母さんや赤ちゃんに何らかの重篤な合併症が発生したとする報告もありません。したがって日本においても、希望する妊婦さんはワクチンを接種することができます」と述べられています。

 いずれにせよ、ワクチン接種は自分の意思で決めるべきで強制があってはいけません。打ちたい人は打っていいですが、不安があり打ちたくない人は打たなくてもかまいません。妊娠女性本人がワクチンを接種しなくても、周囲の人の多くが接種していれば、妊婦さんや赤ちゃんは感染症から守られます。

※参考:Interim recommendations for use of the Pfizer-BioNTech COVID-19 vaccine, BNT162b2, under Emergency Use Listing(https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/341786/WHO-2019-nCoV-vaccines-SAGE-recommendation-BNT162b2-2021.2-eng.pdf別ウインドウで開きます(酒井健司)

酒井健司
酒井健司(さかい・けんじ)内科医
1971年、福岡県生まれ。1996年九州大学医学部卒。九州大学第一内科入局。福岡市内の一般病院に内科医として勤務。趣味は読書と釣り。医療は奥が深いです。教科書や医学雑誌には、ちょっとした患者さんの疑問や不満などは書いていません。どうか教えてください。みなさんと一緒に考えるのが、このコラムの狙いです。