コロナ禍で生活が苦しくなった人への政府の特例貸し付け制度の利用額が1兆円を超えた。政府は貸し付けの利用者を対象に新たな支援金を支給すると発表したが、借金である貸し付けの利用をためらう世帯も少なくなく、そうした人はこの支援金がもらえない。貸し付け業務を担う現場からは、借金を困窮者支援の中心に据える政府の姿勢に疑問の声も出ている。
都内の40代の独身女性は5月、滞納していた2カ月分の家賃の支払いに特例貸し付けで借りた20万円を充てたという。「支払いができて、心が落ち着いた」と話す。
特例貸し付けは「緊急小口資金」と「総合支援資金」の2種類があり、両方を使うと最大200万円まで無利子で借りられる。原資の全額を国が出し、貸し付け事務を各地の社会福祉協議会が担う。厚生労働省の25日の集計では、特例貸し付けが始まった昨年3月から今月19日に貸し付けを決めた金額は1兆130億円余り(速報値)と、リーマン・ショックの影響が残る2009年度の50倍に達した。政権は「重層的な安全網」の中心施策と位置づけ、コロナ禍の生活危機をある程度支えた面はある。
だが、この安全網からこぼれ落ちる家庭もある。
中学2年生の娘と2人で暮ら…

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