第3回「五輪の強行望んでない」揺れる選手、国代表の絆にも溝

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塩谷耕吾 野村周平
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 自宅でテレビをつけるとき、東京五輪ボクシング男子ウエルター級代表の岡沢セオン(25)=INSPA=は慎重にチャンネルを選ぶ。五輪に関するニュースを目にしないように気をつけているからだ。日々の報道に心を動かされている余裕はない、と思っている。

 世間から、五輪への期待、熱気は開幕まで1カ月を切っても感じられない。でも、目標は以前と変わらない。「五輪でメダル。最高の準備をしておかないといけない」

 今春、3年間所属した鹿児島県体育協会をやめた。引き続き世話になることもできたが、以前から温めてきた考えをかたちにしようと動いた。「ボクシングは(試合でファイトマネーを得る)プロだけでなく、アマチュアでも稼げることを発信したかった」

 知人の紹介などで鹿児島や東京などの企業15社とスポンサー契約を結んだ。今年度の協賛金は1千万円に達する見込みだ。練習に打ち込むには十分な額だが、大半の企業との契約は単年。五輪後も支えてもらえる保証はない。

 メディアの取材を受けるとき、支援企業の名前が入ったTシャツを着るようになった。「お金をもらっている以上、結果が欠かせない。応援してよかったと思ってもらいたい」。そのためにもメダルがほしい。

 国を挙げた祝祭ムードを期待するのは難しい、と分かっている。日本のため、国民のために戦う、と構えるつもりもない。「支えてくれる周りの人のために、がんばる」

錦織圭には賛同できない「俺たちは五輪が一番」

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 日本オリンピック委員会(JOC)は今年2月、各競技の強化選手を対象としたミーティングをオンラインで開いた。コロナ下での五輪を控えるアスリートたちの本音を聞くために設けられた場で、山下泰裕会長も同席した。

 60人以上の選手が参加し…

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