「小池旋風」後の政局凝縮 都議選の象徴、中野区を歩く

東京都議選2021

軽部理人、池上桃子
[PR]

 25日に東京都議選が告示された。4年前、自民党と対峙(たいじ)し、街頭演説を繰り返した小池百合子知事が一転して沈黙を保つ中、今回の都議選では、「知事与党」が各選挙区で対決する。野党勢力は候補者を一本化して共闘で挑む。その構図を象徴する中野区(定数3)を歩いた。

 小池氏が特別顧問を務める地域政党「都民ファーストの会」から立候補したのは、党代表を務める現職の荒木千陽氏(39)。25日昼、中野駅前で「私の心には小池知事がいます。ここにいるつもりで街頭演説をさせて頂いております」とアピールしてみせた。

 荒木氏は、小池氏の衆院議員時代に秘書を6年務めた「側近中の側近」(都民ファ都議)だ。選挙事務所の入り口には、小池氏のポスターが10枚以上貼られ、党の宣伝カーでは事前収録した小池氏の音声を流す。陣営関係者は「小池氏の知名度に全面的に乗っかる必要がある」と語る。

 「小池旋風」が巻き起こった前回、都民ファはほぼ全ての選挙区でトップ当選を果たした。中野区では、荒木氏が4万4千票を獲得し、次点に2万票差をつけた。

 だが今回、都民ファは厳しい戦いを強いられる。

 要因の一つが2017年10月の衆院選だ。小池氏は都議選での勢いに乗り、希望の党を結党したが惨敗を喫した。小池氏への批判が都民ファにも影響し、その後の地方選でも勢力をわずかに拡大するのみだった。ある都議は「都民ファは衆院選からずっと低迷したままで、話題にもならなくなった。常に動向が報じられる国政政党に比べて、地方政党はすぐに忘れ去られる」と振り返る。

 そして、迎えた都民ファにとって2度目の都議選。昨夏の都知事選で自民の実質的な支援を受けた小池氏は今回、都民ファへの支持を明確にしないまま告示を迎えた。別の都民ファの都議は「荒木さんには踏ん張ってもらわないといけない」。

 都民ファとともに知事与党を担った公明党も厳しい選挙戦を強いられている。

 前回は、国政で連立政権を組む自民とたもとを分かち、都民ファと選挙協力した。今回は自民と協力して都議選に臨むが、移動や外出の自粛が求められるコロナ禍で支持母体・創価学会の活動に制約がある中、1993年以降続けてきた全員当選に危機感を抱く。

 公明が最も厳しい選挙区の一つに位置づけるのが中野区だ。現職の高倉良生氏(64)は各地で街頭演説をこなす。25日午後に応援に入った山口那津男代表は「国会議員がいない政党では、国政と連携できない。東京と国とのネットワークを生かした政策実現が公明党にはできる」と訴え、都民ファを牽制(けんせい)した。

 自民は小池氏との関係を修復して迎えた今回、元区議で新顔の出井良輔氏(48)を擁立した。前回は小池氏が都知事に就任した際に記念撮影を拒んだ現職議長が落選。過去最少の当選者数に終わった歴史的大敗の象徴となった。25日には茂木敏充外相や地元選出の衆院議員が続々と応援に入り、「議席を奪還しなければいけない」と訴えた。

 国政野党は共闘を進める。

 「無駄を切り、医療介護や子育て、教育を拡充するために財源を使うべきだ。そのためにも、今のイエスマン都議会を変えていく」

 立憲民主党の現職、西沢圭太氏(42)は、25日午前に開かれた出陣式でそう声を張り上げた。集まった聴衆の中には、共産党の支持者の姿も見られた。80代の女性は「いつもなら共産の候補に投票するが、野党はバラバラにやってたら勝てない。西沢氏は医療や福祉の充実を訴えてくれているので、今回は立憲に入れたい」

 立憲と共産は今秋の衆院選も見据え、定数が1~2の選挙区を中心に候補者を調整。定数3の中野区でも西沢氏での一本化に成功した。共産関係者は「過去に現職がいた選挙区なので、独自の候補者を擁立したい思いもあった。だが衆院選も見据えて共闘を大きな流れにするために決断した」と明かす。

 このほか中野区では、無所属新顔の沢口祐司氏(66)も立候補した。軽部理人、池上桃子)