芸術に忖度は無用? 「宮本から君へ」判決の「エール」

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編集委員・石飛徳樹、神宮桃子 構成・小峰健二
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 出演者が有罪判決を受けたことを理由に、内定していた映画「宮本から君へ」の助成金を不交付とした独立行政法人の日本芸術文化振興会(芸文振)の決定について、「裁量権の逸脱・乱用」として取り消しを命じる判決が出た。「公益性」を主張する芸文振側に対して、「芸術の自主性」の観点からクギを刺した判決に、「画期的」との評価が原告側から上がった。自由な表現と公的助成との関係はどうあるべきか。

 2019年に公開された真利子哲也監督の「宮本から君へ」は、理不尽な暴力に汚された人間の尊厳を描いている。文化庁所管の芸文振から助成金1千万円が内定していたが、出演者の1人、ピエール瀧さんが麻薬取締法違反で有罪判決を受けたことで、芸文振は「公益性の観点」から助成金の不交付を決定した。

 製作したスターサンズの河村光庸社長は「専門家の審査を経て内定した助成金を、『公益性』というあいまいな言葉で不交付にするのは、表現の自由を保障する憲法21条に違反する」と不交付の取り消しを求めて同年12月に提訴していた。

 21日の東京地裁の判決は、助成すれば「国は薬物乱用に対し寛容である」というメッセージになる、との芸文振側の主張を退けた。公益性という多義的な概念は運用次第で特定の芸術団体に不当な不利益を与え、自由な表現活動を妨げる恐れがあると述べた。そのうえで、不交付でスターサンズに生じる不利益は「小さいものとはいえない」と認定した。

 原告側の伊藤真弁護士は記者会見で「表現の自由の価値に重きを置いた画期的な判決」と述べた。特に、今回の判断の前提として「芸術団体が社会の無理解や政治的な圧力によって自由な表現活動を妨げられた歴史的経緯」を踏まえるべきだと明言した点を評価した。

 「判決には芸術の『自主性』…

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