ホンダが下した「究極の判断」 F1撤退と真の存在意義

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聞き手・岸善樹
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 ホンダが、モータースポーツの最高峰フォーミュラワン(F1)から完全撤退する。最後となる今季は5月から33年ぶりの5連勝を果たすなど、チームは絶好調だ。ホンダにとってF1はどんな意味を持つのか。長年、F1に関わってきたホンダ執行職でモータースポーツ担当の渡辺康治さん(56)に聞いた。

 ――5月23日のF1第5戦、モナコ・グランプリ(GP)でレッドブル・ホンダが優勝しました。「モナコでの1勝は3勝分の価値がある」といわれる難コースで勝てるのに、なぜ撤退するのですか。

渡辺康治さん

1964年生まれ。欧州地域本部四輪事業部長などを経て、2020年4月からブランド・コミュニケーション本部長。F1のパワーユニット供給先レッドブルとの窓口を務める。

 「私がホンダに入ったのは、F1がきっかけです。1987年入社ですが、前年にウィリアムズ・ホンダが総合優勝して、かっこいいなあとあこがれました。F1撤退という社の決定に納得はしているものの、続けたい気持ちはもちろんあります。でも、ホンダは四輪車事業では電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)へ切り替えて、世の中をリードする方向にかじを切りました。この方向で新たな挑戦をしよう、ということです」

 ――政府は2050年のカーボンニュートラル温室効果ガス実質排出ゼロ)を打ち出しました。もはや車の電動化という流れは避けられないということですか。

ホンダがF1を撤退してでもしたい挑戦とは何なのか。ホンダ「らしさ」をこれからどう追求するのか。記事の後半で渡辺さんに迫ります。

 「環境と安全に真剣に取り組むのはホンダのDNAです。脱炭素を『はやりもの』としてやっているのではありません。1972年には、当時最も厳しかった米国の排ガス規制『マスキー法』をクリアするCVCCエンジンを開発しました。当時も排ガス規制やエネルギー危機といった課題に取り組むため、64年から続けていたF1活動を68年をもって休止しました。その後、15年にわたってF1からは遠ざかりました」

 「今回も、脱炭素というハー…

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