2年ぶり、夏の甲子園をめざす戦い 敗者の笑顔に思う
2年ぶりに夏の甲子園をめざす戦いが始まった。26日、第103回全国高校野球選手権大会(日本高校野球連盟、朝日新聞社主催)地方大会が南北海道で開幕し、札幌、室蘭両地区で1回戦の計5試合があった。春の選抜に3回出場の鵡川が10点を奪って2回戦に進んだ。
次いで北北海道が28日に、東京五輪の影響で日程を早めた千葉が7月1日にスタートを切る。同17日の高知で全49大会が始まる。8月2日に代表が出そろい、全国大会は同9日に開幕する予定。
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青空に舞った白球が、外野の芝生で弾んだ。
南北海道大会札幌地区の開幕試合。一回1死から右越え三塁打を放った北広島西の3年生、辻中祐輝がベンチに向かって拳を突き上げると、仲間たちの笑顔が広がった。客席からは拍手が湧いた。
2年ぶりに選手権大会が始まった。7月にかけて各地に球音が戻ってくる。気持ちが高ぶる一方、複雑な思いをぬぐいされないでいる。新型コロナウイルスが今年もまた、いつもとは違う「夏」を強いているからだ。
緊急事態宣言の対象地域を中心に、球児たちは練習時間の確保や練習試合の実施など部活動に大きな制約を受けてきた。北海道も20日まで宣言下だった。北広島西は春季道大会札幌地区1回戦で敗れた5月7日を最後に対外試合ができなかった。練習も平日の1時間に限定されたり、学年別で行ったり。実戦経験を積もうにも、部員11人では紅白戦もできなかった。相手も条件はほぼ同じ。札幌工の佐藤友貴監督は「まともに練習できていないので、けがが心配だった」と明かした。
十分な準備ができず、特に3年生は歯がゆい思いを抱えたまま、最後の夏を迎えたのではないか。
北広島西は五回コールドで敗退した。大敗のなかで、辻中は一回の三塁打を含む計3安打を放った。3人の3年生を中心に、11人で頑張ってきた部員たちは打席で追い込まれても粘り、守備でも打球に最後まで食らいついた。
全国で最も早く夏が終わったが、辻中は笑っていた。「試合、という目標があるだけでうれしかった。苦しかったけど、やりきったから悔いは全くありません」
逆境にくじけなかった自負があるのだろう。その表情を見て、胸がすっとした。(山口裕起)
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