高齢化進む団地に「地域の活動拠点」オープン

小林祝子
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 高度経済成長期に造られた埼玉県北本市の北本団地が、若い世代に人気の「良品計画」などと手を組み、失ったにぎわいを取り戻そうとしている。ジャズ演奏家の夫婦に東京都内から移住してもらい、空き店舗を再生させた喫茶店を開いた。活性化の試みに賛同した資金支援も広がる。

 北本団地は2千戸を超える大型団地で、JR高崎線北本駅からバスで約5分の場所にある。1971年秋の入居開始から間もなく半世紀で、少子高齢化が進む。商店街は各地の公営団地によくあった1階が店で2階が住まいのタイプだが、今はスーパーなど営業中の数店を除き、シャッター街となった。

 その一角に1日、「ジャズ喫茶『中庭』」がオープンした。空き家だった区画を改装した店は、グランドピアノやドラムセットのあるオープンテラスで、明るいイメージの店構えだ。

 営むのは、ジャズ演奏家落合康介さん(34)と妻加奈子さん(35)。店舗2階に住み、職住一体の暮らしを始めた。2人は「団地に再びにぎわいを取り戻したい」という地域の人たちの思いに共感して都内から移住を決めたという。

 それまで、ライブハウスなどで調理をしていた加奈子さんは「コロナの影響で仕事がなくなり、生き方を考え直した」と話す。いまは、「近所の方が店をのぞいて声をかけてくれる。近くに直売の農家があり、新鮮な食材を使ったメニューを考えるのが楽しい」。演奏もする康介さんは「長く愛される場所にしていきたい」と意気込む。

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 築50年を迎える団地の高齢化率は40%を超える。少子化も著しく、主に団地内の子どもが通っていた小学校が3月に閉校した。団地設立に合わせて開校した学校だった。

 空き店舗の再生を企画したのは、地元のまちづくり会社「暮らしの編集室」だ。代表岡野高志さん(34)は「団地はたくさんの友だちと遊んだ思い出の場。寂れていくのを見るのがつらかった」と話す。地元出身の30代前半の2人と一緒に2019年から町おこしの活動を始め、落合さんに声をかけたのも岡野さんだった。

 団地の状況を懸念する市と所有する都市再生機構(UR)、「無印良品」を展開する良品計画、同社子会社「MUJI HOUSE」、暮らしの編集室の5者は連携して、「北本団地活性化プロジェクト」に取り組んでいる。

 団地の商店街を若い世代に魅力的な空間にしようと、団地リノベーションを手がけるMUJIが2階住居部分の改装を担当した。そこに移住したのがジャズ喫茶を営む落合さん夫婦で、店は今後、料理の腕を振るいたい市民に店ごと貸す「シェアキッチン」などにも活用する予定だ。

 団地再生の動きを資金面で支えようとする人たちもいる。市と暮らしの編集室が昨年12月、「ふるさと納税」の仕組みを使い寄付を呼びかけたところ、124人から目標の200万円超が集まった。寄付した人からは「私も団地育ちなので人ごとと思えない」などの声が寄せられたという。(小林祝子)