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「見えざる症状」を追え 医学者が水俣に通い続ける理由

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奥正光
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 「公害病の原点」とされる水俣病は公式確認から65年たった今も、解明されていない被害の実態がある。患者と認定されていない人でも、同じ時代に同じ生活環境にあった人の中に、神経認知機能の低下が認められることが近年の調査で新たにわかってきた。先達に学び、水俣に通う一人の医学者が研究を続けている。

 医学者は岡山大大学院教授の頼藤(よりふじ)貴志医師(44)。母親のおなかの中で、母親が食べた魚介類に含まれたメチル水銀により被害を受けた胎児性水俣病患者と同じ世代(還暦前後)で、水俣地域で育った人たちの調査をしてきた。

 2012~14年、胎児期に低・中濃度の水銀にさらされた23人(水俣病患者1人を含む)に神経認知機能検査をした。その結果、目で見た情報を制限時間内に正確に筆記したり、複雑な図形を模写したりすることが苦手なことがわかった。

 聞き取りでは、ちょう結びや折り紙、縄跳びなどが苦手でからかわれ、悔しい思いをした人も多かった。頭痛や耳鳴り、段差のないところで転びやすいといった悩みも聞かれた。就学や就労など、人生のさまざまな場面で長期間、深刻な影響を受けてきた実態も浮き彫りになった。

 昨年夏からは、胎児性患者1…

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