「アクセス不可能」と言われた地、”あと1キロ”に迫れ

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中山由美
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 観測船しらせは、東オングル島の岸から約500メートルの氷海に止まった。「2020年1月5日午後2時50分、昭和基地接岸」――。私が原稿をまとめている間に、観測隊公式の連絡が国内へ送られ、発表の段取りが進む。「接岸」はそれほど重大な節目なのだ。

 乗員はタラップで海氷上に降り、基地のタンクからのばしたホースを船のタンクにつないだ。「送油開始!」。越冬用の燃料約500トンを数日かけて流して送る。パイプ輸送できるのは1キロ以内。この距離まで近づけないと、小型コンテナなどに移し替えて運ばなくてはならない。労力と時間は何倍もかかる。

【動画】7月21日に記者サロン「南極から地球がみえる」

 南極大陸周辺で、昭和基地のあたりは海氷が特に厚い。65年前、1次隊が目指したころは「接岸不可能」と言われた一帯だ。話は南極観測の始まりにさかのぼる。1957~58年の国際地球観測年を前に、各国は南極へ研究者を送ろうと動き出す。「日本も参加を」と言い出したのが、朝日新聞の一記者だった。でも、「敗戦国」の印象が抜けない時代、日本の参加は認められたものの、割り当てられたのは他国が避けたアクセス困難な場所だった。

 海氷は、夏でも厚さ5~7メ…

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