クセになる…犬の顔並ぶ「例の看板」 ファンは学会設立

白石和之
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 一見何の変哲もないのに、全国にファンがいて「学会」までできた看板がある。3種類の犬の顔が横に並ぶペットショップの看板だ。新潟県長岡市内やその近郊に数百枚。すべて手描きで一枚ずつ微妙に違う。その個性に気づいたら探し続けずにはいられなくなる、と評判だ。

 看板を掲げているのは長岡市大島新町1丁目の「松田ペット」。松田保夫社長(77)が小型犬を扱い始めた2001年ごろ、「生き残るためにインパクトのある看板を」と始めた。

 描いているのは同県小千谷市で看板店を営む近藤忠男さん(88)。「温かみのある絵にしよう」と松田社長と相談し、画風を決めた。

 看板は横約180センチ、縦約90センチ。当時人気があったビーグル、チワワ、ヨークシャーテリアの3匹を描くことに。初めのころは松田社長から渡された犬の写真を参考にしたが、すぐに慣れて写真を見ずに描くようになった。

 「全部同じに描いている」と近藤さんは言うが、甘えるような表情やりりしいもの、コミカルなものと一枚ずつ個性があり、中には顔の向きが逆だったり、背景の色が違ったり、3匹の並び順が異なったりするレアものもある。

 この違いに気づいた10人ほどが会員となり、見つけた様々なパターンの看板を発表しあう「松田学会」が17年にできた。たまたま長岡のダムや電車を見学に来て看板を見かけファンになった東京都大阪府三重県などの在住者もいて、中には全国の通り沿いの風景が画像で確認できるグーグルマップストリートビューを見ながら看板を探した人もいる。

 主宰する新稲(にいな)ずなさん(33)は15年に東京から長岡に移住。「似たような看板がいくつもあるな」と思っていたら、友人が「一枚一枚違うんじゃない?」とつぶやいたことがきっかけで、看板探しにはまった。

 掲示場所は松田社長の頭の中にしかなく、見つけること自体がファンの楽しみだ。郊外の田園に囲まれた住宅地を走る県道沿いの小屋などが多い。ファンたちが「松田銀座」と呼ぶ多発地帯もある。

 いまも新たな掲示場所が加わり、既存の看板も5年ほどで掛け替えられている。200枚ほど見つけ、それを紹介する冊子「例の看板 フォトグラフ・コレクション」を自費出版した新稲さんは「自分が見ていないだけで、気がつけば楽しいものが身の回りにたくさんある。そんなことを教えてくれる看板です」と話している。(白石和之)