「小さな声届ける」 本屋で開いたLGBTQ+イベント

皆木香渚子
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 名古屋市熱田区の商店街に今年1月、「TOUTEN BOOKSTORE」が開店した。店内は本棚や床に使われる木の香りが漂い、暖色のライトが照らす。店主の古賀詩穂子さん(29)は「誰にでも開かれた本屋」をめざしている。

 売れる本か、という基準ではなく、「自分と違う生き方を知り、目が開く本」を置く。本のジャンルは名古屋のご当地情報や食など生活感のある本、政治や社会問題を扱う新書など、多岐にわたる。

 6月初め、性的マイノリティーの当事者2人を招き、トークセッションを開いた。店には事前予約した15人が集まった。

 写真家のKotetsu Nakazatoさん(24)は、「クィアって分かる人?」と壇上から問いかけた。「クィア(Q)」は、規範的ではないとされる性のあり方を包括的に表す。自身もQで男女どちらに属すかを選ばない「ノンバイナリー」であると公表している。「『結局どっち?』と聞かれても、表す言葉がない」と声を上げた。

 ライターでゲイであることを公表している松岡宗嗣さん(26)は、中高時代、「『ゲイキャラ』と周囲に認識され、笑いにするか隠すしか選択肢がなかった」と明かした。

 トークセッションは、既存のジェンダー規範に「違和感」を投げかけることをテーマにした雑誌「IWAKAN」第2号(REING刊)が出たことを記念して開催された。古賀さんが編集部へ相談し実現した。

 開店後に古賀さんは「IWAKAN」創刊号を読み、性の多様さに驚いたと話す。それまで性的マイノリティーについて意識する機会は少なかった。Qとしての性のあり方もこの雑誌で知った。性的マイノリティーを示す「LGBT」にQを加え、更に多様な性のあり方を含めた「LGBTQ+(プラス)」という表現にも触れ、「LGBTQ+の本をきちんと置こう」と決めた。

 Kotetsuさんはセッションで「地元の本屋さんにクィアの本が置かれていたら、店主さんの理解に泣いていたと思う」と話した。壇上でこの言葉を聞いた古賀さんは、「素直にうれしかった。本屋として、耳を澄まして聞いた小さな声を届ける立場にもある」と感じたという。

 「TOUTEN BOOKSTORE」では現在、今年のエープリルフールに出版された絵本「うそ」の原画展を7月3日まで開催している。店は日曜定休。金山駅より徒歩7分。問い合わせはメール(hello@touten-bookstore.netメールする)へ。(皆木香渚子)