昨夏の涙の分まで 引退後も練習に、後輩支える卒業生 

吉村駿
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 2年ぶりの全国高校野球選手権京都大会が7月10日、開幕した。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、昨夏は中止に。涙をのんだ大学1年生の中に、部員数の少ない母校の練習を支える姿があった。

 6月16日、亀岡高のグラウンドで、高校生に交じって神戸国際大1年、小林翔力(しょうり)さん(19)が打撃練習をしていた。「よし、元気出していこうや」「1歩目の速さを意識しよう」。部員らを鼓舞する小林さんの声が響く。

 小林さんは今年3月、亀岡高を卒業。大学進学と同時に神戸市で一人暮らしを始めた。だが4月下旬、兵庫県内に3度目の緊急事態宣言が出され、大学の授業は全てオンラインに転換。入部した硬式野球部の練習も禁止になり、急きょ、亀岡市の実家に戻ることに。

 戻ってくると、気になるのはやっぱり後輩たちのことだった。少ない部員で紅白戦など実戦形式の練習はできるのか。1年生にはどんな選手がいるのだろうか。

 5月下旬、亀岡高野球部の冨山勇樹監督に連絡を取った。冨山監督は「いつでも来ていいぞ」。家でオンライン授業を受け終わると、すぐに着替え、同校のグラウンドに向かった。

 昨年、小林さんはチームの4番打者だった。長打力で打線を牽引(けんいん)し「夏はまず1勝。そこから甲子園を目指す」と練習に励んだ。

 だが新型コロナの影響で、甲子園につながる京都大会は中止に。「悔しい以外の言葉が見つからず落ち込んだ」。独自大会では好機を生かせず、チームは初戦で大敗。小林さんの夏は終わった。

 7月。小林さんら3年生が引退すると、部員は18人から12人に減った。これでは試合形式の練習ができない。新チームで主将になった川勝友翔君は「盛り上げようとしたけど、人数が少なく寂しかった」。

 そんな時、小林さんは、冨山監督から声をかけられた。「練習に来て、後輩たちに指導してくれないか」。「もう一回グラウンドに戻って野球ができるのがうれしかった」と、二つ返事で受けた。

 1、2年生に交ざり、これまでと同じように練習した。ノックでは外野を守り、走り込みも全力。同じ右打者に打撃フォームを教え、積極的に声を出した。

 昨年の秋季大会後、退部やケガで部員が8人になった時もあった。その時は、相手チームの了承を得て練習試合に参加することもあった。「後輩たちを気にかけるというより、自分が楽しんでいた」と振り返る。

 今月20日、京都府兵庫県に出ていた緊急事態宣言は解除された。2カ月に及んだ大学のオンライン授業も終わり、21日の練習を終えると、小林さんは神戸市に戻った。

 京都大会で躍動する後輩たちの姿は、見られないかもしれない。小林さんは、「まずは1勝の報告を待っている」と願う。主将の川勝君は力を込める。「大学生になっても来てくださった小林さんのおかげで、僕らは最後の夏に挑める。1勝して恩返しをしたい」(吉村駿)