謝罪の弁なき千佐子被告の涙 アクリル板越しに見た胸中
「あの人は不動産王や。とにかくいっぱいお金を支援してくれたね」「この人も良い人。お金持ちやったわ……」
最高裁で死刑判決が確定する筧(かけひ)千佐子被告(74)は、私との面会の中で亡くなった元夫や交際相手について振り返るとき、「良い人」のことをよく覚えていた。その言葉が指す人はいずれも「お金持ち」だった。私が名字しか挙げてなくても、自ら下の名前も口にして説明した。それ以外の人は「フレンドやね」と言う程度。多くを語ることもなかった。
青酸入りカプセルの飲ませ方も説明
犯行に使った青酸入りのカプセルの飲ませ方についても語った。健康食品と称して自分も相手の前で飲んで見せるものの、誤飲を防ぐために「大きな袋と小さな袋を用意しておくの。大きな方に毒入りを入れ、自分は小さい方を飲む」。カプセルではなく、砂糖のようにコーヒーに入れて溶かす方法はどうか、と尋ねる私に「これはちょっとでも効く強い薬。口をつけた途端、味がおかしいということになるやろ」と言った。
被害者のことも犯行方法も説明できる。最も不可解だったのは、被害者への謝罪の言葉がまるで出ず、誰に対する殺害理由も決まって「差別されたから」と言うことだった。この話題のときの被告は強い怒りをにじませ、「人種差別のようだった」とまで口走るものの、具体的な内容を説明できたことはない。しかし、被告の中で怨念のような強い被害者意識を抱いていることだけは確かだった。
筧千佐子被告とアクリル板越しの面会を続けた記者は最高裁判決を控え、大阪拘置所を訪ねました。2年ぶりの再会に見たものは何だったのでしょうか。
「差別された」繰り返す
接見を重ねるうち、「差別さ…
- 【視点】
安倍記者が筧被告と面会を始めた頃、京都総局のデスクを務めていました。 筧被告が少しずつ心を開き、語り始めた犯行の様子や生い立ちなどについて報告を受ける立場でした。被告の様子や話の内容を伝えられ、時にはその冷酷さに恐怖を感じ、また別の時