コメントプラスで「ざわっとしたこと調理」プチ鹿島さん

 朝日新聞デジタルの新機能「コメントプラス」が6月下旬、専門的な知見や豊かな視点をもつ「コメンテーター」27人を社外から迎え、本格スタートしました。最新のニュースや話題を伝える記事とあわせ、コメンテーターによる投稿を読むことができる新サービスです。

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 新聞の読み比べで知られる時事芸人のプチ鹿島さんは、朝日新聞デジタルで始まった「コメントプラス」にコメンテーターとして参加しています。強い関心を持って読み、コメントしたという連載「実行犯の『遺言』 中村哲さん殺害事件を追う」の筆者、アジア総局の乗京真知記者とオンラインで語り合いました。

 乗京 新聞14紙を毎朝読み比べて、SNSなどで発信されています。なぜ「新聞」なのでしょうか?

 鹿島 新聞記者は、僕らが行けないところで当事者に当たって取材してくれているからです。僕はそこを利用させてもらっている。「実行犯の『遺言』」も、僕はこれが読みたかったんだというものを体現している。現場の新聞記者だな、すごい仕事を見せられたなと感じました。

 その乗京さんに、海外で取材をしている記者がどれだけ大変なのか聞いてみたかった。そもそも特派員は足りているんですか。

 乗京 朝日新聞社の海外取材拠点は5総局と29支局。南アフリカのヨハネスブルク支局では、アフリカのほとんどの国々を1人の記者がカバーしています。

 鹿島 受け持ち範囲が広くて大変だ。

 乗京 私が主に取材してきたアフガニスタンパキスタンは、日本から6千キロも離れていて日本にはなじみが薄い地域です。では、どうやって人々の息づかいを伝えていくか。ニュースの大きさはもちろん大切ですが、日本の人たちにどう影響しているのかということも常に意識して、時間と予算をどれだけかけるか、試行錯誤しています。

取材成果、デジタルで余すことなく伝える(乗京記者)

 意識しているのは、取材した素材を、紙面だけではなく、デジタルでもルポにして連載にしたりインタビューにしたりして「マルチユース」、つまりいろんな届け方をしています。デジタルは、紙面と違ってスペースが限られていないので、ある程度のボリュームで取材成果を届けられる。紙面の発行部数が少なくなっていく中、取材成果を余すことなく届けるチャンネルとして、デジタルを活用していかないといけない。

 鹿島 紙面でもデジタルでも、いかに多くの人に触れてもらうかという工夫をしているわけですね。

 乗京 私は今年で40歳。紙とデジタルのはざま世代です。入社した5年後の2011年に、前身のアサヒ・コムを発展させる形で朝日新聞デジタルが立ち上がりました。新聞社がデジタルに力を入れるようになってからまだ10年なんです。だけど、いまはデジタルにシフトしていかないといけない時代になっている。

 紙面の大切さも身にしみています。新聞では読みたい記事の横で目に入った記事で、自分はこんなことに興味があったんだと知ることもある。新聞はそういう出会いの場として、手を差し伸べあう社会の「かすがい」のような存在になれるんじゃないかと思う。

 どれだけ読者の立場に立って発信していけるかが重要です。新機能「コメントプラス」は、識者にコメントを投稿していただき、そういう見方もあるよねと多くの読者に気づいていただく仕掛けでもあります。

 鹿島 乗京さんの連載ではいかに見せるか、読ませるかという工夫を感じました。動画を入れたり、これまでの概要を丁寧に書いたりしている。だから海外の事情に疎い人でも読み進めることができる。すごく配慮されていて面白かった。

読み比べは「やじ馬精神」(プチ鹿島さん)

 乗京 私も鹿島さんに伺いたい。プロレスから映画、時事まで幅広く、しかも新聞、テレビ、雑誌などに毎日目を通されていますが、どのように活用されているんですか。

 鹿島 自分の中では、一本の線でつながっています。時事ネタって面白いだけじゃなく、一緒に共有するとうれしいものなんです。よく社会派とか言われるんですけど、そんな高尚なことじゃなくて、起きたことをみんなでわいわい語り合うのが好き。週刊誌やスポーツ紙、ワイドショーで取り上げられていることを確認したいなと思ったとき、「新聞を利用すればいいんだ」と気づいたんです。

 同じ事柄でも新聞によって社説が違うことも不思議ではなく、面白い。いろんな見方をインプットしたいという、もともと自分の楽しみでやっていたことを話したらウケた。ネタにしていけばいいんだ、と。仕事というより、自分の興味からスタートしています。読み比べってやじ馬精神なんです。

 「コメントプラス」のコメンテーターとして、新聞読み比べとしての、やじ馬としての、僕しかできない切り口のコメントもあるだろうと思いました。

 乗京 私も鹿島さんの文春オンラインの記事を読んでいますが、その手があったかと感心させられます。

 鹿島 普通の読み比べにならないよう、ニュースに興味のない人にいかに読んでもらうか。多くの人に興味を持ってもらえるような導入、そして四コマ漫画のように配置も考えています。例えば、国会審議中にタブレットでワニの動画を見ていた平井卓也デジタル改革相を「ワニ大臣」といってコメントできるのは、コメンテーターの中で僕くらい。新聞はネタの宝庫ですから、面白かったところをどう調理して紹介できるかだと思っています。

 自分が驚いたこと、ざわっとしたことが基本だと思う。乗京記者の著書『追跡 金正男暗殺』でも、冒頭のパスポートを警察が韓国籍と見間違えたというところが衝撃でした。韓国に伝えられたから北朝鮮のロイヤルファミリーだとわかった。北朝鮮に伝えられていたら、素知らぬ顔で遺体を引き取り、事件は全世界が知ることもなく闇に葬られた可能性もあったわけですね。自分がざわざわした部分を第三者に「実はこんなことがあったんだよ」と伝えることができる。

 さらに最新の連載「実行犯の『遺言』」は、途方もないことをよくぞやってくれたと。情報は本当なのかとか、利用されていないかとか、一つひとつ確認しなくてはならないだろうし、どれぐらいの時間とコストがかかったんだろうなと思うと、できあがったものを読める幸せを感じます。連載終了後、僕も「コメントプラス」しました。

 乗京 筆者としては、調査報道によって中村哲さんを殺害した容疑者を見つけたというところが肝だと思っているのですが、きっと読む人によっていろんな読み方があると思うんです。

 鹿島 中村哲さんのことも金正男氏のことも、過去のことじゃない。(中村さん事件の)容疑者がわかったという驚きもあるけど、みんなが共通して持っていたのが「なんでよりによって中村さんみたいな方が殺されてしまうんだ」というやるせなさ。でも、それが徐々に分かっていく。これは、いまも続いている。全然過去の話じゃない。その問いかけがすごかった。これをいろんな人に、僕なりの伝え方で紹介するのが役割なんだろうと思います。

 乗京 終わったと思っていた話が後につながっていたり、また繰り返されたりということがあります。歴史はその連続で、そこから教訓を得ていくわけですけど、コメンテーターの方が過去と現在の出来事を結びつける見方を提示してくださることも期待できる。

 鹿島 僕は記事を読んで堪能しているだけなんですけどね。僕にしかできないスタンスでコメントできればいいなと思います。

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 ぷち・かしま 1970年生まれ。長野県出身。芸人、コラムニスト。新聞14紙を読み比べ、スポーツ、文化、政治と幅広いジャンルからニュースを読み解く。『東京ポッド許可局』(TBSラジオ)、『キックス』(YBSラジオ)出演中。著書『芸人式新聞の読み方』(幻冬舎)『教養としてのプロレス』(双葉新書)など。

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 のりきょう・まさとも 小学生のころブラジルで暮らした経験から大学で国際関係論を専攻し、2006年に朝日新聞社に入社。16年からイスラマバード支局長としてパキスタンアフガニスタンを担当し、19年からアジア総局員として両国のほか東南アジアで取材している。著書『追跡 金正男暗殺』(岩波書店)。