異例の株主提案可決で監視役交代 「お家騒動」の天馬

編集委員・堀篭俊材
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 プラスチック製品メーカーの天馬(東証1部上場)が29日に東京都内で開いた定時株主総会で、海外の投資ファンドが提出した株主提案が可決され、取締役会のチェック役である監査等委員が交代した。今月ピークを迎えた株主総会では、日本でも存在感を増している「物言う株主」からの提案が相次いでいるが、可決されるのは異例だ。

 可決されたのは、大株主である米投資ファンドのダルトン・インベストメンツグループと、香港の投資ファンドオアシス・マネジメントが出した取締役の選任議案。取締役会の監督にあたる「監査等委員」に就いている社外取締役の交代を求めていた。

 取締役の選任をめぐっては、ファンド以外にも取締役会、当事者の社外取締役でつくる監査等委員会、創業家から計4本の議案が出ていた。29日の総会では、ファンドと取締役会の2本が賛成多数で可決され、監査等委員が自らの再任を求めた議案などは否決された。監査等委員の社外取締役2人の退任と、広野裕彦社長の続投が決まった。

 昨年春、ベトナムにある天馬の子会社が追徴税をまぬがれようと、現地当局の公務員に2500万円相当の現金を渡していた疑惑が発覚。監査等委員会は昨年12月、当時の取締役に損害賠償を求めて東京地裁に提訴していた。

 監査等委員会は、社外取締役が中心になり、独立した委員会として取締役会をチェックする役割を持つ。天馬では、ベトナムでの贈賄疑惑の責任追及をめぐって、監査等委員会と他の取締役が対立。創業家も分裂して、それぞれの陣営に分かれて争う「お家騒動」に発展していた。監査等委員の交代を求める大株主であるファンドの提案は、その他の取締役にとっては「渡りに船」だった。

 一方、天馬と同じ監査等委員会設置会社に移行する上場企業は増えている。今回、監査等委員の社外取締役が意に反して交代を余儀なくされたことで、経営陣と対立してでもチェック機能を果たせるのか制度上の課題が残った。

 三井住友信託銀行によると、今年6月の総会では株主提案は48社で出ている。51社だった昨年に続いて高水準になっている。29日現在、可決されたのは天馬の1社にとどまる模様だ。

 1949年に創業した天馬は、家庭用収納ケース「Fits」やプリンターなどプラスチック製品の成形加工を手がけている。今年3月末のグループの従業員は約7500人。(編集委員・堀篭俊材