データ時代に追いつけないWTO 有志国で連携を

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聞き手・編集委員 吉岡桂子
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 21世紀の経済の重要な資源といわれる、データの流通をめぐる国際ルール作りが難航している。先進国と途上国の溝が埋まらない世界貿易機関(WTO)は、新しい産業分野で役割を取り戻せるのか。米国が距離を置いたことで審議不能が続く貿易紛争手続きは、よみがえるのか。WTO史上唯一の安全保障にかかわる紛争処理で、判断に加わった経験を持つ荒木一郎横浜国立大学教授にきいた。

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荒木一郎・横浜国立大学教授=2021年5月12日、横浜市、吉岡桂子撮影

あらき・いちろう 1959年生まれ。83年通商産業省(現経済産業省)に入り、通商政策局やWTO事務局など通商畑を歩んだ。2003年から横浜国立大学に転じ、05年から現職。専門は国際経済法、通商政策。

 ――貿易や投資の国際ルールは、160カ国以上が加盟する世界貿易機関(WTO)が軸となって築いてきました。デジタルデータの国境を越えた流通についても、議論は進んでいますか。

 「WTOも1990年代後半から電子商取引に関係する議論はしている。ただ、WTO協定の大半が議論された90年代前半は、インターネットが今ほど普及しておらず、デジタル技術の速い発展に制度が追いついていないのが現状だ」

 「しかも、国によって力点が大きく異なる。先進国の間でも、欧州はプライバシー、米国は自由、日本は安全と開きがある。新興・途上国の場合、中国やインドに限らず、情報の自由な流通よりも検閲など国家による管理を重視する国が多い。加盟国が多様なWTOでは、国際的な調和は難しい。日本は、オーストラリアシンガポールなどと共にWTOで有志国連合を作り、議論を進めようとしているが、どこまでまとまるかは分からない」

 「先進国が集まる経済協力開…

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