シイタケ栽培の廃棄物から高額カブトムシ 農家の副業

高橋杏璃
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 シイタケ栽培に使った後に出る「廃菌床」を使って昆虫を育てる取り組みを、秋田県内一のシイタケ産地・横手市の農家が始めた。これまで廃棄コストがかかっていたものから利益を生み出し、ほかの農家にも還元できる仕組みをめざす。

 直径5センチ以上はある巨大な幼虫が、茶色い昆虫マットの上でうごめいていた。中央、南アメリカ原産のヘラクレスオオカブトの幼虫だ。「カブトムシの王様」とも呼ばれ成虫は300万円ほどで取引されることもある。

 幼虫の大きさには圧倒されるが、マットは普通の土のように見える。実はシイタケ栽培に使った後に出る「廃菌床」だ。「シイタケ栽培にはもう使えなくても昆虫にとってはまだ養分が残っているんです」と男性が話した。男性は父の代からのシイタケ農家で、シイタケ栽培の会社を経営している。昆虫を育て始めてからは「キングヘラクレス」と名乗り、ブリーダーとしても活動している。

 シイタケを原木からでなく人工的に育てる「菌床栽培」では、おがくずなどに栄養分を混ぜて固めた菌床を使う。シイタケの種となる菌を入れてから5カ月の培養を経て、シイタケは生え始める。そこから半年間の収穫期間を終えると、もう菌が必要とする養分がない廃菌床となり、キノコ栽培には使えない。

 廃菌床をどう処理するかはキノコ農家にとって長年の課題だ。キングヘラクレスさんの場合は別の農家に肥料として無償で使ってもらうため、運搬費用などが1菌床(約2キロ)あたり1円ほどかかっていた。

 もっとうまく再利用できないか。模索していたキングヘラクレスさんに3年ほど前に声をかけてきたのが、大館市の昆虫販売会社。廃菌床は高品質なカブトムシやクワガタを育てるのに適し、まとまった量を提供できる農家を探しているという内容だった。思いがけない提案に二つ返事でOKし、代わりに昆虫飼育のノウハウを教えてもらう業務提携を結んだ。

 昨春、幼虫が食べやすいように廃菌床に独自の加工をした昆虫マットの製造を始めた。秋からはこのマットで、カブトムシやクワガタ約5千匹を卵から育てている。早い種類だと今秋ごろに成虫になる見込み。今後は自社製のマットや成虫の販売を始める予定だ。

 キングヘラクレスさんは「キノコも昆虫も、同じ質なら環境に配慮した製品を買いたいと思ってもらえるのでは」と話す。大館の会社と協力し、今後は県内のほかの農家にもノウハウを広めたいという。「農家とブリーダーをつないで、みんなを巻き込んでいきたい」(高橋杏璃)