針金の生き物はみな回る 美術家・今村源は「流れたい」

田中ゑれ奈
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 針金を使った立体や既製品にわずかな違和感を加えたオブジェなど、彫刻らしからぬ彫刻をつくる美術家・今村源。大阪市のギャラリーノマルで7月3日まで、新作個展「流れること/留(とど)めること」を開いている。

 壁全体に、針金製の小さな彫刻が点々と配置されている。カメやタンポポ、ゾウなどありとあらゆる生物からコロナウイルスまで、いったん立体的に成形された後でプレス機でぺちゃんこにつぶされている。30体ある彫刻は展示室を一周する一本のひもで結ばれていて、ひもの回転に従ってじりじり動き、時折ぐるんとひっくり返る。

 せっかく作った彫刻をつぶすのは元々、シルクスクリーン版画の版にするためだった。作家にとっては痛みを伴うが、動き続ける世界から瞬間を切り取って留める彫刻という枠組みに「留まらない」ための試みでもある。

 そうしてできた彫刻をひとつなぎに連動させるのは「すべてのものはつながりながら関係している」という意識から生まれたアイデアだ。かねてモチーフとしてきた「回転」は、安定して回るコマの「激しく動いていながら止まっている」両義性への関心に由来する。それは、人間が生き物を食べて消化することで、細胞が更新されていくイメージにも通じる。

 床の中央にはドーム状のスクリーンがあり、流れる雲の映像が投影されている。雲もまた、絶えず移り変わりながらもその時々のユニークな形で、人々の想像をかき立てる存在だ。留まりながらも「流れる」状態への憧れは、他の生き物と同じくぺちゃんこになって渦を巻く、自画像ならぬ針金製の「自刻像」に託されている。

 ギャラリーノマル(06・6964・2323)。(田中ゑれ奈)