ディオール、ジル・サンダーなど続々 パリメンズの後半

ファッション

編集委員・後藤洋平
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 2022年春夏シーズンのパリ・メンズコレクションは6月27日で6日間の全日程を終えた。ルイ・ヴィトンなどが発表した前半に続き、後半でもディオールやロエベ、ジル・サンダーなどの注目ブランドのほか、日本からも数々のデザイナーが参戦した。

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各ブランドのファッション・ショーの動画もご覧になれます。

ディオール、久々のリアルショー

 コロナ禍以前に大規模なショーを開催してきたディオールはメンズで久々に客を招いてランウェーを披露した。

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ディオール(ブランド提供)

 デザイナーのキム・ジョーンズはアーティストとのコラボレーションが得意で、今回の相手は米国テキサス州出身の人気ラッパー、トラヴィス・スコット。とはいえスコットが生地などのデザインを担ったわけではなく、ジョーンズがスコットと対話を重ねるなどして服づくりを進めたという。

 オートクチュールメゾンならではの職人技で仕立てられたジャケットやコートと、その対極とも取れる、ジョーンズの遊び心があふれたプリントシャツやニットは、前シーズンまでと変わらないスタイル。ただ、今回はハイウエストで裾の広がったフレアパンツを多用していることがポイントだ

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ディオール(ブランド提供)

あの有名ブランドが日本製の生地で

 ミニマルファッションの最上級ブランド、ジル・サンダーで今回注目したいのは、使用する全てのウールが日本製だということ。

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ジル・サンダー(ブランド提供)

 デザインを手がけるルーシーとルークのメイヤー夫妻は服づくりにおいて素材選びを重要視しているが、欧米製ウールに比べてハリ感がある日本製を評価した。今回もコロナ禍によってデジタル動画での発表だったが、やはりこうしたブランドはリアルなショーなど、素材感が伝わる形式の方が強くアピールできるのではないだろうか。

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ジル・サンダー(ブランド提供)

 ポール・スミスも日本の吉田カバンが手がける「ポーター」と協業した。ブランドが日本市場に浸透しているという背景もあるだろうが、スミスは自他ともに認める大の親日家。2年前にインタビューした際には「1982年に初来日し、オリエンタルでエキゾチックな景色や、仕事に対する日本人の姿勢に心底ほれこんだ」と熱く語っていた。

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ポール・スミス(ブランド提供)

 今回の新作群は「夜明けから夕暮れへの移り変わりを表現した」といい、日の出のオレンジやミッドナイトブラックまで多様な色のバリエーションになっている。

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ポール・スミス(ブランド提供)

巧みな色づかいが光る

 「心躍るような現実逃避」「夜遊び」といったテーマを掲げたのはロエベ。人体をモチーフにした派手な柄のセットアップに人気アイテムの「パズルバッグ」を合わせたルックなど、強めの色づかいが印象的だ。ブランドによると、デザイナーのジョナサン・アンダーソンは今回、抽象的な形状を単純化し、鮮やかな色を取り入れることを意識したという。

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ロエベ(ブランド提供)
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ロエベ(ブランド提供)

 大手メゾンと比較するとまだまだ知名度は高くないが、人気セレクトショップなどで売り上げが好調なナマチェコは濃い色の合わせが巧みで、モデルが歩く映像をシンプルに流して質感が伝わる新作だった。デザイナーのディラン・ルーはイラクのクルド地域出身で、幼い時期にスウェーデンに移住した異色の経歴だ。

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ナマチェコ(ブランド提供)

日本から参加のブランドは

 新進ブランドがパリで発表するには資金的にも実力的にもハードルが高いが、コロナ禍以前のパリ・メンズでは大がかりな舞台装置などを作らず身の丈にあったショーを毎回開き、徐々に支持者を広げてきた。

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ナマチェコ(ブランド提供)

 パリ・メンズの後半に発表した日本勢も、それぞれの個性を示した。海外の大手と違い、ほとんどの日本ブランドは巨大ファッショングループに属さないが、ファッションの都でしっかりと認知されているブランドが多い。

 濃く、深い複数の色の組み合わせがいつもながら秀逸だと感じるのはカラー。デザイナーの阿部潤一が90年代に仲間とともに立ち上げたブランド「PPCM」は生地や質感にこだわりつつ、一見すると極めてベーシックな服が多かった。

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カラー(ブランド提供)

 しかし、04年にカラーを設立し、年を重ねるごとに構造が複雑になり、色が豊かになってきた。ここ数シーズン、阿部が追求しているのは「分解と再構築」。今回も異素材の組み合わせや、ブルゾンにニットの一部分が組み込まれた服などが発表された。

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カラー(ブランド提供)

 一方でメゾンミハラヤスヒロは冒頭からしばらくはダークトーンの服を披露した。ここ数年間、ミハラといえば前シーズンまでデニムと挿し色で押す明るい印象があっただけにやや意外だったが、肩を落としたトップスや、ゆとりのあるパンツは現代的なシルエットだ。

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メゾンミハラヤスヒロ(ブランド提供)
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メゾンミハラヤスヒロ(ブランド提供)

 ホワイトマウンテニアリングは「都市生活とアウトドアの垣根をなくすための世界観を追求した」という。とはいえ、アウトドアのテイストを日常生活やファッションに落とし込むスタイルはブランドの根幹であり、デザイナーの相澤陽介が最も得意とする手法。

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ホワイトマウンテニアリング(ブランド提供)

 数々の人気ブランドとコラボレーションを重ねてきたが、今回は4年ぶりに英国ブランド「バブアー」と協業したジャケットなどを披露。使用するジャカードの生地は、多摩美大でテキスタイルを専攻していた相澤が図柄から制作したオリジナル。ブランドが配布した資料には「ファッションを通じて、『越えられない山は無い』というメッセージを込めた」とつづられていた。

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ホワイトマウンテニアリング(ブランド提供)

LVMHプライズの覇者は東京から参加

 ダブレットは東京・三鷹市内の農園でリアルなショーを開催し、その模様をパリ・メンズ公式サイトなどでライブ配信した。ヤギが鳴くのどかな会場に登場したのは、ロックをテーマにした服の数々。刺繡が施されたライダースのベスト、ビッグサイズのフライトジャケットに糸ほつれ加工のアーミーパンツといった顔ぶれだ。

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ダブレット(ブランド提供)

 不用品の再利用などでサステイナブルな取り組みも続けている。デザイナーの井野将之はショー後の取材に「リーバイスの古着を使ったデニムジャケットのほか、洋服の青山から提供してもらった過剰在庫の服を再構築したものもある」と語った。

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ダブレット(ブランド提供)

 ダブレットは18年に世界中の若手デザイナーが志す「LVMHプライズ」で日本初のグランプリに輝き、一気に注目された。既にファッションに敏感な層による支持基盤は固めつつある。自ら手がける小売店は持たず、一貫して卸しのみでビジネスを展開。しかも、「これまで付き合いのあるお店を大切にしたい」との理由から、取引先を厳選する姿勢を続けている。(編集委員・後藤洋平