挫折と海と温かい人、私は残った 東大研究者から漁師に

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東野真和
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 岩手県大槌町の海で海洋生物の生態を調べていた研究者がこの春、漁師になった。週6日は海に出ながら、魚市場のシステム開発をするIT企業でも働く。この道を選んだのは、挫折と海への深い愛ゆえだ。

 ウニ漁が解禁になる6月上旬の口開けの日。中本健太さん(30)は「あぶらめ丸」と名付けた小型船に1人で乗り込み、夜明け前に吉里吉里漁港を出た。研究者時代に覚えたウニの生息場所に向かい、3時間ほどかけて100個ほどをすくい取った。

 この日はIT企業での仕事があるため、午前6時過ぎには港に戻り、ウニの殻から身を取り出す作業を終えた。週2、3日ある口開け以外の日は、知り合いの漁師が定置網を引き揚げるのを手伝う。

 埼玉出身の中本さんが大槌に来たのは、東大農学部卒業後の2015年。町から借りた仮設住宅で暮らしながら、東大大気海洋研究所国際沿岸海洋研究センターで、巻き貝や小さな甲殻類など藻場にいる小さな生物の生態を研究していた。

 19年に博士号を取得。センターに研究員として勤め始めた矢先の12月、肺に穴が開いて空気が漏れる肺気胸を患い入院。海に潜ることができなくなった。

 「データ解析や実験だけで終…

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