南シナ海ゆく英空母の航路は 識者「航行の自由作戦だ」

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聞き手・金成隆一
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 英空母クイーン・エリザベスの打撃群が南シナ海に入りました。東南アジアなどの各国と軍事演習を重ねつつ、日本へ向かって航行しています。これに対し、中国軍南シナ海や台湾海峡付近での訓練を繰り返しており、緊張が高まっています。英国は台湾海峡を通るのか、中国はどう反応するのか。元自衛艦隊司令官の香田洋二さんに聞きました。

――英空母の打撃群が南シナ海に入りました。8月にはフィリピン海での演習が予定されています。今後の航路をどうみますか?

 南シナ海を北上し、(台湾とフィリピン・ルソン島の間の)バシー海峡を抜けたらフィリピン海です。南シナ海という、中国が一番嫌がる所を抜けることになります。

 英国版の「航行の自由作戦」です。中国は、南シナ海は中国が漢の時代から2千年以上にわたって関わってきた自国の海域であり、国際法上の「公海」の概念を超越し、「ぜんぶ自分の庭だ」と言っています。英空母が通れば、中国は軍艦と戦闘機で「お迎え」に来るでしょう。偵察と牽制(けんせい)が狙いです。英空母は、それらとにらみあいながら北上することになります。

 注目は、英空母あるいは護衛艦が、中国の主張する領海(12カイリの内側)を通るか否かです。米国の軍艦が12カイリ内に入れば、中国は猛反発してきました。さて、英国はどうするでしょうか。

行動で示す、英国の「理屈」

 参考になるのは、英国の黒海での振る舞いです。英駆逐艦は6月、ウクライナ南部のクリミア半島沖12カイリの内側に入りました。これに対し、ロシアは「自国の領海だ」と反発し、警告射撃して、戦闘機を近くに飛ばしたと公表しました。世界的なニュースになりました。

 ロシアは激しく反発しましたが、英国から見れば、国際法上のルールに従って行動しただけの話です。沿岸国の安全、秩序を損なわない「無害通航」の権利は国連海洋法条約で認められています。国家を代表する軍艦は「無害な航行であれば自由にできる」という立場で、それをクリミア半島沖で実践しました。

 そもそもクリミア半島はウクライナの領土であり、英駆逐艦はロシアの領海など一切通っていません。英国は「あなたの領海ではない上、私には権利もある。根拠のないことでうるさく抗議するな」と行動で示したわけです。

――ロシアの領海ではないから、ロシアに文句を言われる筋合いはない。仮にロシアの領海であっても、国際法上の「無害通航権」があり、今回の航行には一切問題がない、という立場ですね。同じ姿勢を南シナ海でも示す可能性があるでしょうか?

 あります。南シナ海には複数の国家・地域が領有権を主張する海域があり、中国も「自国の領海」と言っています。中国は南沙(スプラトリー)諸島の人工島に滑走路を建設したり、西沙(パラセル)諸島にミサイルを配備したり、実効支配も強めています。けれども国際的には認められていません。

 米国は南シナ海で、中国が領有権を主張し、実効支配もしている海域をわざわざ通ることで、①「誰のものか定まっていない海域を通っているだけで、中国の領有の主張を認めない」、②「誰の領海であれ、軍艦が12カイリ内で無害通航するのは国際法上の権利だ」という2点を中国に示しているのです。これ以上の海洋の秩序変更を抑止する上で、重要な行動です。

 当然、英国が同じことをやるのかが注目点です。

 私は、英国は、南シナ海でも対中国で同じことをやると思います。黒海でロシアにやったのですから、南シナ海で中国にやらない理由はないのではないでしょうか。

 そもそも国際的な慣習法を磨き上げてきたのは英国です。それを誇りにしています。それらを無視して実効支配を強める中国の振る舞いを黙認できないと思います。

 台湾海峡は? 通航のタイミングは? そして日本の対応は…? 記事後半では、英国が持つ「老練さ」と、そこから考えられるシナリオ、翻って日本の対応などについて聞きました。

――英空母の打撃群は台湾海峡を通るでしょうか?

 英国の性格からすれば間違い…

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