第6回「大統領閣下 扇動やめるべきだ」 選挙実務者の覚悟

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ワシントン=園田耕司
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 ジョージア州の選挙実務を担っていたガブリエル・スターリン(共和党)のもとに、1本の電話がかかってきた。予定していた記者会見の2時間前だった。大統領選から1カ月ほどが経った2020年12月1日のことだ。

【連載】「トランプの反乱 再選への策謀」

昨年の米大統領選挙での敗北を認めず、「不正」を訴え続けるトランプ前大統領の再選への動きに迫る連載です。第1部最終回となる連載6回目では、トランプ氏が最も露骨に圧力をかけて選挙結果を覆そうとしたジョージア州に注目します。ジョージア州では、選挙関係者に思わぬ事態が起きていました。

 電話の主は、ジョージア州に投票機器など選挙システムを提供しているドミニオン社のプロジェクトマネジャーの女性だった。

 普段は多少のことで動揺しない彼女だが、この日は電話の向こうで声を震わせていた。ジョージア州ギネット郡の集計所で選挙システムを運用するために働いている20代の技術者の若者が、ネット上で家族も含めて殺害の脅迫を受けているという。

 スターリンが、すぐにツイッターをチェックすると、若者の名前とともに「おまえは裏切り者としてつるされるべきだ」という言葉が書かれ、絞首刑用の縄が垂れ下がっている写真が拡散しているのを見つけた。

 スターリンはこう振り返る。

 「そのとき、私の堪忍袋の緒が切れた。一般の若者まで脅される事態に強い憤りを覚えたからだ」

     *

 ジョージア州は大接戦だった。もともと共和党が強い「レッドステート」の一つで、共和党が知事、州議会のどちらもおさえている。しかし、今回の大統領選では、バイデンがリベラル色の強い黒人票を掘り起こし、トランプに競り勝った。

トランプ氏はジョージア州の選挙関係者に圧力をかけつづけます。あおりを止めないトランプ氏の影響で、当局者や関係者への中傷も止まりません。そんな状況に、ある人物が口火を切ります。

 両者の差はわずか1%以内の…

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    佐藤武嗣
    (朝日新聞編集委員=外交、安全保障)
    2021年7月7日8時30分 投稿
    【視点】

    かつてワシントン特派員として米国政治を取材するなかで、日本政治との違いを実感したのが、政府内でのチェック・アンド・バランスが機能していることだ。共和党でありながら、職業人としての信念・良心に照らして、大統領のカジとりが正しくないと思えば、公

連載トランプの反乱(全13回)

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