ショパン弾くエース ピアノで鍛えた指先、変化球に鋭さ

渡部耕平
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 ショパンを弾く指のタッチで、切れのあるスライダーを投げる。青森南のエース玉熊佑成(ゆうせい)投手(3年)はピアノ歴15年。小学2年で全国コンクールに出場した腕前の持ち主だ。

 野球部の練習に励みながら年1回、ピアノ教室の発表会でクラシック曲を披露している。「ピアノを野球に生かしています。指先がよく動くと、ボールにもうまく回転がかけられるのです」

 3月に奏でたのは、ショパンの「幻想即興曲」。疾走感あふれる演奏は、勢いのある投球に通じる。腕の力は抜きながら、振り下ろす重さを指の先に伝える。ピアノなら深みのある音が響き、投球ならばボールの伸びと切れが増す。

 得意のスライダーの生命線は、人さし指と中指の先を球の縫い目にしっかりかけること。指先で強いスピンをかければ、曲がりが鋭くなる。調子の良さは投げた瞬間にわかる。「指先で、ピシッと音がします」

 途中まで直球と同じ軌道だが、打者の手前で右横に滑っていく。バットを出すと芯を外れるので、打ち取りたい場面で効果的だ。

 威力を発揮したのは昨夏の独自大会だった。1回戦の聖ウルスラ戦。九回、チームは2点を勝ち越されて7―9に。なお無死満塁のピンチで、救援を任された。当時の背番号は12。スライダーに勝負をかけた。

 低く、鋭く。打者のひざ元をえぐるように、厳しくコースを突いた。1人目は二ゴロ、2人目は空振り三振、3人目は見逃し三振。すべてスライダーを決め球にして、追加点を許さなかった。チームは敗れたが、確かな自信をつかんだ。

 変化球を生かすため、冬は重さ120キロのバーベルをかつぐスクワットで足腰を鍛えた。春には直球の球速が7キロ増し、130キロに。緩急がさえて、スライダーはより大きな武器になった。

 この夏、つかんだ背番号は「1」。頼れる大黒柱に成長した。

 マウンドに立つたび、感じることがある。「仲間の声が聞こえてくると、落ち着くんです。1人だけのピアノの発表会のほうが緊張します」と笑顔を見せた。

 さあ、夏の舞台へ。「やってやるんだ、という強い気持ちが出てきます。先発して完投して、勝つ。甲子園をめざします」(渡部耕平)