甲子園全てじゃない 部員1人、大会不出場でもひたむき

佐藤瑞季
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 岐阜県高校野球連盟に加盟する68校のうち、今夏の岐阜大会には67校が出場する。郡上北だけ、出場がかなわなかった。それでも、上平洸太君(1年)は、唯一の野球部員として、広いグラウンドで黙々と練習に励んでいる。

 野球を始めた小2のときから、夢はプロ野球選手になることだった。小柄な体格を生かし打席に立てば四球を選び、守っては二塁手として頭上に来た球を大きくジャンプして捕る。楽しくて仕方なかった。

 中1のときに全国大会に出場し、当時のナゴヤドームで試合をしたこともある。ベンチ入りし、「ここでプレーできる選手になりたい」と、さらに夢はふくらんだ。

 高校でも野球を続けると当たり前に思っていた。進学先は、通学距離や成績も考えて決めた。郡上北は野球部に所属する先輩はおらず、野球経験のある同級生を誘ったが、部員は集まらなかった。

 監督、顧問と2対1での練習が始まった。平日はノックを中心にティー打撃、筋トレ、素振りをする。児玉智紀監督(24)がノックした球を高橋一樹部長(24)とで交互にとり、ネットに向かって送球する。

 遠くに飛ばせる打撃練習ができるのは休日だけ。打った球を1人で拾って片づけるのに、30分以上かかってしまうからだ。

 寂しくならないよう、練習前のアップでは、福山雅治の「甲子園」や「Official髭男dism」の「宿命」などを聴きながら、気持ちをあげていく。

 1人でできることは限られているが、「野球ができているだけで楽しいし、ありがたい」と前向きだ。来年、1年生が入部してくれることを期待している。「入ってくる子に負けないよう、先輩としてお手本になれるよう、今できることに全力で取り組む」

 児玉監督は「部員が1人ということをネガティブに捉えず、好きな野球にひたむきに取り組んでくれている」と話す。児玉監督は、県岐阜商の野球部OBで、けがでマネジャーに転向した経験がある。「甲子園に出ることがすべてじゃない。自分で決めたゴールをめざして努力することが大切。めげずに、よくやっている」と見守る。

 目下の課題は体づくり。プロテインや牛乳を飲み、白ご飯をどんぶり2杯は食べるようにしている。入部当時より体重は3キロほど増えた。それでも、身長155センチ、体重49キロ。「まだまだですね」

 夏の大会中は、他校の部員に負けないよう、自分も成長したいと意気込む。「それぞれの場所で、できる限りのことをやる」。目標に向かって、すでに走り始めている。(佐藤瑞季)