百貨店去り、市役所来たる にぎわい維持へ入居…課題も
かつての子供服売り場にあるのは「商業雇用課」――。地方都市の百貨店が相次いで閉店し、その跡地に市役所を始め公共機能を集約させるケースが出ている。行政側は庁舎建て替えコストの削減や中心市街地活性化をうたうが、元百貨店の「公共化」には思わぬ課題も潜む。(波多野陽)
エントランスはガラス張りで、フロアには軽快なBGMが流れる。商業施設の華やかさや明るさが演出される傍らで、エスカレーターやエレベーターは一部止まったまま。テナントが入居する場所はあるものの、百貨店が抜けた建物は人がまばらだった。
人口約16万8千人で、富山県で第2の都市の高岡市。JR高岡駅に近い地上8階建ての商業ビル「御旅屋(おたや)セリオ」にはビルが開業した1994年から百貨店「大和」(本社・金沢市)の高岡店が入っていた。
だが、郊外の商業施設などに押され、2019年8月、旧店舗時代を含めた76年の歴史に幕を閉じた。高岡市の50代男性は「ここのレストランで食事をするのが市民の楽しみだった。こんなことになって情けない」と話す。
百貨店撤退によるビルの空洞化を防ごうと、行政が動いた。高岡市土地開発公社が、ビルを運営する市の第三セクター「オタヤ開発」からフロアと土地の一部を約10億円で購入。20年に約1・4キロ離れた市役所から商業雇用課と観光交流課を移し、かつて子供服売り場だった5階フロアに入居させた。隣にはアデランスの店舗が残っている。
今年6月からは、従業員の控室にしていた4階を新型コロナウイルスのワクチン接種会場にした。高岡市は、ビルに公的機能を持たせて人の流れを生んで中心市街地を活性化する、と狙いを説明する。
だが、市は地方債残高が1千億円を超えており、その市がビルを買い取ることには市議会で反対意見もあった。オタヤ開発は多額の負債を抱えており、支援策としての入居では、との批判もある。
今年6月には、市がオタヤ開発に融資する際に、元金返済を事実上先延ばしにする「オーバーナイト」という不適切な会計操作を04年度から行っていたことが判明。ビルの活用問題は7月4日投開票の市長選で争点になっている。
記事の後半では、専門家が「行政が入ると周辺の地価が下がる」と思わぬ問題点を指摘します。なぜでしょうか。
経済産業省によると、国内の…