文化財活用の新たな指針に 法隆寺金堂壁画の限定公開

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編集委員・中村俊介
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 この秋、世界遺産法隆寺奈良県斑鳩町)の金堂壁画(重要文化財)が限定公開される見通しとなった。70年余り前、金堂を襲った火事で深く被災し、飛鳥時代以来の鮮やかな色彩もほとんど失われた。しかし、無二の美に寄せる人々の思いを通して境内には収蔵庫が設けられ、焼損壁画は被災したままの姿で大切に保管されてきた。いま令和の時代を迎え、非公開の眠りに就いていた仏たちが目覚めようとしている。

 金堂壁画には、傷ついてもなお、本物のすごみと幾世代にもわたって守り抜かれてきた歴史の重みがある。公開への決断は、そんな先人の思いを今後も末永く現地で受け継いでいくという決意表明と言えないか。

 東アジアの至宝といわれた白鳳美の被災は痛恨の出来事であった。が、その衝撃が文化財保護法の成立を促し、世界的に評価の高い戦後日本の保護制度確立に道筋をつけた。壁画は唯一無二の芸術であるとともに、歴史遺産保護の歩みのシンボルなのだ。

 近年、文化財の活用が加速する。地域社会の活力源やアイデンティティーのよりどころとしても注目が集まる。法隆寺境内の収蔵庫で一度は眠りに就いた焼損壁画が目覚めようとしているのも、この潮流と無関係ではあるまい。再び市民の眼前に現れた壁画から文化財保護の原点をいま一度思い起こすこともまた、「活用」の形と言えるだろう。

 クラウドファンディングにも…

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