お総菜、誰でも無料でどうぞ 「親切な冷蔵庫」のある街

森直由
[PR]

 総菜店で売れ残った食品を、ショッピング街の入り口に置いた「親切な冷蔵庫」に入れて、誰でも無料で持ち帰ることができる。そんな取り組みを、大阪市東淀川区で会社を経営する本川(ほんかわ)誠さん(44)が始めた。

 冷蔵庫があるのは、大阪市東淀川区にあるショッピング街の「ショッピングタウン エバーレ」。1970年代にできた。近年は空き店舗が目立ち、周辺のマンションの住民の高齢化も進む。今年1月には、テナントに入っていたスーパーが閉店した。

 「このままでは買い物に困るお年寄りが出る」。区内で学習塾や整骨院などを営む本川さんは、地域住民のことが心配になった。そこで、3月にショッピング街に総菜店「ばんざい東あわじ」を開店させた。平日の午前11時~午後2時に営業し、鳥のから揚げやだし巻き卵、コロッケ、サラダなどを販売。毎日50人前後の高齢者らが買い物に来ている。

フードロスの削減にも

 本川さんにはもう一つやりたいことがあった。ネットニュースで、生活困窮者らに無料で食料を提供する「公共冷蔵庫」の取り組みが、海外で広がっていることを知った。「総菜店で余った食料を、困った人へ無料で提供できないか。フードロスの削減にもつながる」

 1月に閉店したスーパーから冷蔵庫1台を譲り受けた。「親切な冷蔵庫」と名付け、総菜店の開店にあわせてショッピング街の入り口に置いてみた。

 午後2時に総菜店が閉まった後、1パックあたり500グラムほどの売れ残った総菜をパックに詰めて、午後3時ごろに冷蔵庫に入れる。平均して1日あたり10パック前後を入れているが、夕方にはすべてなくなるという。

 冷蔵庫に取りに来た人と、直接話をすることはないが、メッセージが寄せられていることも。「収入が減り、とても助かりました」「両親の介護と仕事との日々の中、ありがたく頂いております」「うれしくて涙ながらにいただきました」――。

 本川さんは「さまざまなメッセージを読んで感動しました。冷蔵庫を置いて本当によかった。この取り組みが全国へ広がってほしい」と話している。(森直由)

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

【10/25まで】すべての有料記事が読み放題!秋トクキャンペーン実施中!詳しくはこちら

  • commentatorHeader
    長島美紀
    (SDGsジャパン 理事)
    2021年7月5日18時1分 投稿
    【視点】

    ヨーロッパから生まれた「コミュニティフリッジ(公共冷蔵庫)」は、生活に困窮した方がゴミから廃棄された食品を手に入れるのではなく、「食べ物」として手を伸ばしやすい環境を作ること、また廃棄される食品を無駄にすることなく必要な人に手渡すことができ

    …続きを読む