「頭から血」、「教師づら説教」 習氏の演説、由来は?

瀋陽=平井良和
[PR]

 「鋼の長城にぶつかり血を流す」「教師づらした説教」――。1日に北京で催された中国共産党の結党100周年の祝賀式典で、習近平(シーチンピン)党総書記(国家主席)は強烈な表現で「外圧」への対抗姿勢をあらわにした。一見びっくりするような言葉使いだが、じつは中国では、故事や古典などに由来しているようだ。

 習氏は演説で「我々をいじめ、服従させ、奴隷にしようとする外国勢力を中国人民は決して許さない。妄想した者は14億の中国人民が血と肉で築いた鋼の長城にぶつかり血を流すことになる」と述べた。

 「長城」は、かつて外来の騎馬民族から王朝を守るために築いた長大な城壁のことを指す。長城は一つにつながっておらず各地にあるが、日本では「万里の長城」とひとまとめに呼ばれる。

 「血と肉」などの修飾の表現は抗日戦争時から歌われ、国歌となった「義勇軍行進曲」の歌い出しの部分の「立て、奴隷になるのを望まぬ人びとよ 我らの血肉で新たな長城を築こう」を想起させる。

 演説でその後に続く「血を流す」の部分の中国語の原文は「頭破血流」。直訳すると「頭が割れて血が流れる」という生々しい表現だ。中国で出版されている熟語の辞書によると、その由来は北宋時代(10~12世紀ごろ)に編纂(へんさん)された物語集「太平広記」。物語のうちの一つで、夫婦げんかで夫が妻を殴りつけた時に使われている。

 今では中国人なら誰もが知っている基本的な四字熟語になっており、文中で悪人などを「さんざんな目に遭わせる」ことを表す時に記される。日本でもおなじみの「西遊記」でも、孫悟空が街の関所を通さない警護係を如意棒で殴った時に使われている。表現が強烈なため、日常では激しいけんかの時を除いてあまり耳にはしない。

 また、習氏は演説で「教師づらした偉そうな説教は受け入れぬ」と言った。人権問題などで中国を批判する米国などを念頭にしていると考えられるが、この「教師づら」は原文では「教師爺(教師さま)」となっている。

 「教師爺」という言葉は古典の時代からある表現のようだが、特に有名なキャラクターは官僚による庶民の抑圧をテーマにした京劇「打魚殺家」に登場する。実際には武術の実力が無いのに、権力者に擁護されて自らのことを武術の「教師爺」と呼んでいる人物だ。

 習氏は2012年に総書記に就任して以来、故事や古典に由来する成句を多用してきた。難解な表現も多いが、今回の演説の表現は、中国人にとっては比較的なじみがあるものだったようだ。(瀋陽=平井良和)