九州豪雨で犠牲「電脳女将」の宿 温泉街で活用へ

倉富竜太
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 昨年7月の豪雨で一家4人が犠牲となった大分県・湯平温泉の「旅館つるや隠宅(いんたく)」の建物が、湯平温泉観光協会の事務所などとして活用される見通しとなった。「電脳女将(おかみ)・千鶴」のツイッター発信で、サブカルチャー好きに人気だった宿。行く末が案じられる中、「温泉街のために活用してもらいたい」と遺族が意向を明らかにした。

 旅館は、大女将の渡辺登志美さん(当時81)、長女で女将の由美さん(同51)、由美さんの長男で若旦那の健太さん(同28)が切り盛りしていた。

 電脳女将のツイッターアカウントは、サブカルチャー好きだった健太さんが2016年に開設。イラストを大分県出身の絵師・有葉(あるふぁ)さんが描き、19年12月からは大分県出身の声優・種崎敦美さんの協力を得て音声をつけた。

 大分弁を交えて情報発信するユニークさも受けて、サブカルチャーファンたちに人気の宿になった。被災後、SNSでは、発信が途切れた電脳女将を案じる声や、一家の犠牲を知って悼む声が寄せられ、旅館の今後を心配する声もあった。

 観光協会は「ファンも多く、なんとか建物だけでも残したい」と遺族に打診。実現すれば、協会事務所をそこに移す意向も持っていた。遺族は、宿の経営を継げる人がいないため、「湯平の役に立てるのであれば、使ってもらいたい」と気持ちを固めたという。

 豪雨からまもなく1年を迎える中、遺族が朝日新聞の取材にメールで応じ、「旅館業は廃業してしまったが、建物は何らかの形で湯平の役に立てればと思っている。湯平は自然豊かで人も温かく、これからもぜひ湯平に遊びにきてください」と呼びかけた。(倉富竜太)