パラ選手、社会変化を起こす挑戦 コロナ禍での発信

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セッション2・第2部

 パラリンピックがもたらす社会変革について考えるオンラインカンファレンス「THE INNOVATION  2012 LONDON 〉〉〉 2021 TOKYO」。セッション2「スポーツが人生をポジティブに変える コロナ禍にみるパラアスリートマインド」(7月3日配信)では、選手たちのコロナ禍での過ごし方やスポーツにとどまらない活動なども語り合いました。

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セッション2の出演者

参加者(敬称略)

クリス・スケリー(英) 視覚障害者柔道選手

上山友裕 パラアーチェリー選手

遠藤章造 お笑いコンビ「ココリコ」

久下真以子(ファシリテーター)

 久下 さてここからは、コロナ禍だからこそ、そして、パラアスリートだからこそ起こせるポジティブチェンジをうかがいます。クリス選手は以前から積極的に社会貢献活動に取り組み、コロナ禍では新たなボランティア活動もスタートされたそうですね。

 スケリー チャリティーのアンバサダーとして、婚約者と一緒に活動しています。昨年の1回目のロックダウンでは、障害者らに食料を配布するということをしました。話し相手にもなります。1人きりだと、誰かがそばにいるというだけで違いますよね。人助けをして変化を起こしたかったんです。フェニックスという活動で、より豊かな人生を送るために安全な成長環境を提供する団体です。

 久下 コロナ禍以前の社会貢献活動はどんなことをされていたんですか?

 スケリー フェニックスは作業中心のプログラムで、障害を持った人や自閉症の人々、メンタルヘルスを抱えた人々をサポートしています。安全な成長環境を提供し、そこで仕事や職を身につけてもらい、フルタイムの雇用につなげていくというプログラムです。始めた経緯はそこに婚約者が勤めていて、彼女についていって活動するようになった、というわけです。

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セッション2登壇者のお笑いタレントの遠藤章造さん(左)。視覚障害者柔道のクリス・スケリー選手(画面右)、パラアーチェリーの上山友裕選手(画面左)

 久下 競技の話になりますが、コロナ禍でロックダウンもあり、大変だったんじゃないですか?

 スケリー 英柔道連盟が本当にアスリートをサポートしてくれたんです。オンラインでトレーニングできるようなプログラムをつくって、インターネット上で定期的にフィットネスセッションを開いて体調維持できるようにしてくれました。婚約者と豊かな時間を過ごすことができ、またコロナのおかげで休養時間もとることができました。最高の状態で2021年の大会に臨めるよう、リセットすることができました。

 久下 上山選手も講師として企業や学校などで講演活動を積極的に行っていますよね?

 上山 講演依頼がリオ大会が終わって以降、増えました。やっぱりお金をもらうからには、それなりの講演をしなければいけないっていう逆にプレッシャーに感じています。素人でやっていると申し訳ないなと思い、しっかり勉強しようと思って「あすチャレ!メッセンジャー」のスピーチトレーニングも受けました。

 遠藤 内容は自分の中に台本的なものが何個かあるんですか?

 上山 自分で発表用ソフトを作って、中高生用とか、あとは社会人用とかあります。やっぱり障害者の人が講演をしに来るって聞くと、みんな暗い話を聞かされるんだと思うみたいです。でも、障害者だって明るい人はいっぱいいるし、「障害者=暗い」というわけではないことを発信していきたいと思っているんです。一番うれしかったのは「寝にいったのに、話が面白過ぎて、寝かしてもらえませんでした」っていう感想文があったことです。

 久下 どのようなメッセージを伝えていこうと心掛けているんですか?

 上山 僕も車いす生活になった時は、車いすの人って段差を上れずに大変そうと思っていたんです。でもリオに出場した皆さんは段差とかどんどん自分たちで上ったり、下ったりしていくんです。「すごいな、車いすの人も」っていう感覚でした。そういった車いすだから、という誤解をどんどん解いていけたらいいなと思っています。

 遠藤 うちの娘もそうだったんですけど、障害者と健常者が分かれずに、同じ教室でみんなで一緒に過ごしましょう、みたいな学校が増えてきているみたいです。だいぶ変わってきていると思いますし、今の若い人たちに向けたメッセージも大事でしょうけども、僕らぐらい50歳ぐらいの世代の人たちに、もっと積極的に発信していってもらえればいいなって思います。

 久下 コロナ禍によって上山選手の発信に変化ってありましたか?

 上山 試合がなくなっていってファンの皆さんに情報を発信できなくなって困っていたんです。そんな中で自分らしさを発信したいと思い「はい、今日から禁酒します」など、自分を分かってもらえる、身近に感じてもらえる投稿にしたいと思っています。あとは4人のファン限定のオンライン飲み会もやりました。色々と何かを考え、また挑戦しようと思っています。

 久下 遠藤さん、いかがでしょう?

 遠藤 SNSはもう誰でもできるし、距離が近い。だから「上山さんてこんな人」というのをものすごく感じられるよね。こういうのを僕らも使って発信するようになると、仕事でも今まで劇場で来ていただいたお客様との距離が近づく。

 久下 ところでクリスさん、婚約者との間にポジティブチェンジがあったということなんですね?

 スケリー 去年の秋、ガールフレンドからフィアンセになってくれとプロポーズしました。とても特別な瞬間でした。来年には式をあげたいと思っています。

 久下 どういう出会いだったんでしょう?

 スケリー 出会ったのはリオパラリンピックです。彼女は車いすテニス選手で、出発を記念した選手ディナーがあったんですが、柔道選手と同じテーブルで彼女と一緒になりました。私は彼女の気を引こうと思ってジョークを飛ばしまくったんです。彼女の試合は見られませんでしたが、帰国便が同じで、そこで恋に落ちました。

 久下 お互いに障害があるということですよね? どう理解を深めてきたんですか?

 スケリー 彼女は終始車いすで、2人1組のチームなんです。彼女は目が見えるので、私を案内したりサポートしたりしてくれます。私は彼女の車いすを押して、一緒に映画やレストランに行きます。いいチームなんですよ。彼女が方向を示し、そこまで2人で一緒に向かう。どんなハードルも2人で乗り越えていきます。

 久下 遠藤さんをはじめ、吉本興業の芸人の色々な方がパラスポーツの普及活動に数多く参加していますよね?

 遠藤 実際に自分たちがやってみたら、臨場感とか緊張感を感じたり、意外と楽しいかもっていうのも見えてきたりするので、芸人のフィルターを通して、知ってもらえたらと活動をしています。

 上山 僕らもどんどん発信していって、障害者には気を使わないといけないという、誤解というか、気を使わないといけないっていうところを排除できていければいいなと思っています。そうしたところもSNSなどで変えていきたいなって思っています。

 久下 英国ではお笑い芸人の方がパラスポーツと関わることはあるんですか?

 スケリー リオとかロンドンの大会の時に、毎晩やっている番組がありました。アスリートが登場し、そこにコメディアンも出演し、パラにまつわる色々な発言や表現をするんです。素晴らしい番組でした。

 久下 セッション2では、パラスポーツによるポジティブチェンジについて、皆さんの競技生活から、SNSでの発信など、様々な場面を振りかえって話し合ってきました。

 番組の最後に、皆さんから「私にとってのパラスポーツ」を聞きたいと思います。この先、パラスポーツによって、ご自身に、社会にどのような変化が生じるのか、期待も込めて書いてください。お願いします。まずはクリス選手。「MEAN THE WORLD TO ME」。どういう意味ですか?

 スケリー パラアスリートはまず、家族の代表として、友人の代表として、国の代表として参加させてもらっている、競技団体の代表でもあります。人々に対して、世界に対して、障害を持ったとしても、何でもできるということを示す、そういった意味になります。私は本当に恵まれていました。柔道でも色々なサポートを受けることができた。だから、これは私にとってのすべてなのです。

 久下 上山選手、お願いします。

 上山 僕は「太陽」です。車いす生活になってから、ずっと僕を照らし続けてくれています。照らし続けてくれているおかげで、パラの大会だけじゃなくて、健常者の大会にもどんどん出ていけている。健常者の大会というよりは、一般の全国大会に出場し続けることで、選手としての僕を見てくれている。車いす選手という目線では見られなくなってきました。今後、社会でもこの人って車いすだけどこういうことができる、ここもすごい、とそんな見方ができるような社会に変化していってほしいと思っています。

 久下 最後に遠藤さん、お願いします。

 遠藤 「ほほほいでつながる世界」って書きました。個人的に普段から思っていることなんですよ、自分が何か動こうと思えばやることはあるし、そこで何か一個一個楽しんでいこうみたいな感じでいくと、うまいことみんながつながり合えることだってある。「ほほほい」でつながる世界、これを、僕はこのギャグをやって25年ぐらいになりますが、みんな楽しめるような、そんな空気であってほしいし、そういう世の中になってもらいたい。とにかく、選手の皆さんには本番で活躍をしてもらいたいと思いますね。クリスさんにも「ほほほい」だけは覚えてもらいたいです。

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 主催=公益財団法人日本財団パラリンピックサポートセンター、プロジェクトパートナー=イギリスパラリンピック委員会、メディアパートナー=朝日新聞社