法隆寺金堂壁画、一般公開の実現へ期待高まる

岡田匠、田部愛
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 戦後まもなく焼損して以来、人々の目にほとんど触れることのなかった法隆寺奈良県斑鳩(いかるが)町)の金堂壁画。飛鳥芸術の命脈を今に伝える非公開の至宝が、この秋の限定公開に向けて動き出した。一般公開の実現にも期待が高まっている。

 「焼けてしまったと思っている人も多い。なお形は残っていること、なぜ後世に伝えていかなくてはならないかということを、一般の方に広く知ってもらうきっかけとなるだろう」

 3日、奈良市内で開かれた金堂壁画保存活用委員会。東京芸術大客員教授の有賀祥隆委員長は限定公開に踏み切る意義を、そう語った。

 背景には、保存環境や壁画の素材などについてデータの綿密な分析がある。委員会はワーキンググループをつくり、金堂壁画の収蔵庫内の状態を調査してきた。

 温湿度の変化などについての分析結果を踏まえ、保存環境ワーキンググループの小椋大輔・京都大教授(建築環境工学)はこの日の委員会で、収蔵庫に見学者が入った場合を想定して「壁画への負荷は小さい。今の状況で公開は可能だと考える」と報告した。

 コロナ禍での公開となる可能性を視野に入れ、少人数での入室や自然換気への配慮など、人と壁画の双方へのリスクを抑えながら、休憩時間や見学者を入れない日を設ける必要も示唆。小椋教授はさらに、収蔵庫内の温湿度や二酸化炭素濃度などをリアルタイムでモニタリングする意向も語った。

 壁画保存のための資金を広く募るクラウドファンディングの提案には、委員らから「おもしろい」「喜んでもらえる」などと賛同の声が相次いだ。

 約1300年もの間、あつい信仰に支えられ守られてきた金堂壁画は、単なる美術の名品以上の意味を持つ。法隆寺住職の古谷正覚(しょうかく)管長は「長く守られ受け継がれてきた、いにしえの壁画。焼損してもなお残っていることを、ぜひ知ってほしい。(秋の公開は)壁画を後世に伝え、将来広く公開するためのデータになる」と期待を寄せた。(岡田匠、田部愛)