「もう少し、この村で」 九州豪雨、寄り添う70歳医師

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 昨夏の記録的豪雨で甚大な被害が出た熊本県球磨村で、小さな診療所が医療を続けている。患者の多くは被災者となり、厳しい環境に置かれた。被災から1年。病を診るだけではない。身体と心の変化を見守り、支える。

 梅雨の晴れ間に、村を流れる球磨川はエメラルドグリーンに光っていた。川から70メートルほどの場所に球磨村診療所はある。「体調よかですね。コロナのワクチン接種、受けてくださいね」。診察室で院長の橋口治さん(70)が笑顔で話しかけ、聴診器を当てていた。

 人口約3300人の村でただ一つの医療機関。医師は橋口さん1人、看護師2人、事務職員3人。村が医療法人に建物を提供して1999年に開院した。開院間もない頃から20年以上、橋口さんはここで村民を診てきた。

 昨年7月4日、球磨川からあふれた茶色い濁流が診療所に押し寄せた。がれきが待合室や廊下に流れ込み、カルテや医療機器も水没した。

 それでも直後から、無事だった薬を被災者に処方するなどできることを始めた。数日後に自衛隊が屋内のがれきを撤去し、被災11日後には泥臭さが院内に残る中で診療を再開した。この春には全ての機器が戻り、被災前と同じ医療を提供できるようになった。

 待合室で顔見知りの村民同士があいさつを交わす。以前からの風景だ。橋口さんは診察室での雑談から患者の近況や心の状態をうかがう。長年知る患者が元気をなくしているのに気付くこともある。「見かけの様子は前と変わりない。だけど内情は違うとたい」。被災後の変化を見つめてきた。

 豪雨の直後は避難生活での食…

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