インドネシア、医療崩壊「目前」 駐在員の帰国検討も

新型コロナウイルス

半田尚子、奈良部健
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 新型コロナウイルスが猛威を振るうインドネシアで在留邦人の感染が急増し、3日時点で50人以上が入院を待つ事態になっている。首都ジャカルタでは、隔離病床の9割が埋まり、現地の日本大使館は「医療崩壊の一歩手前」と危機感を募らせる。駐在員の帰国や国外退避を検討する日系企業も出ているという。

 インドネシアの在留邦人は約1万9千人(2019年時点)。在インドネシア日本大使館が把握するだけでも感染者数は3日時点で267人で、約70人に1人が感染した計算になる。うち約3割が6月以降の感染。死者も8人出ている。

 インドネシアでは6月上旬から感染が急拡大。1日の新規感染者数は約5千人から、7月3日には約2万7千人に増えている。インドで見つかった感染力の強い変異株(デルタ株)の広がりが背景にあるとみられる。国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)は6月29日、インドネシアの医療状況について「デルタ株により大惨事の瀬戸際に近づいている」と警告した。

 新型コロナ用の病床を中心に医療現場が逼迫(ひっぱく)。日本大使館の長徳英晶総括公使は「医療機関の収容能力を超えた患者が日々押し寄せ、症状の重い患者以外は入院が難しい」と懸念する。

 日系企業の駐在員に医療機関の紹介などをしている「ウェルビーホールディングス」が把握している入院待ちの日本人患者は3日時点で58人。現地法人の西田陽一郎代表は「入院できないのを心配し、一部の日系企業は駐在員の帰国や国外退避の検討を本格的に始めている」という。

 日本人のワクチン接種が進んでいないことも原因の一つだ。外国人向けの接種の遅れに加え、日本では承認されていない中国のシノバック製が中心で敬遠する人もいる。こうした事態に対応し、日本政府は8月1日、在外邦人を対象に、一時帰国の際の新型コロナワクチンの無料接種を、成田、羽田の両空港で始める。長徳氏は「ぜひ利用して欲しい」と呼びかける。

 ジャカルタを中心に医療用酸素の不足への懸念も広がっている。現地メディアによると、業者の前にタンクを持つ人々が列をつくり、価格は2~3倍に高騰。ブディ保健相は2日、「国内で酸素のパニック買いが起きている」と懸念を示した。

 入院できず、自宅療養を続ける人々の個人購入の増加が一因とみられ、SNSにはジャカルタで自前の酸素タンクを手にした40人以上が路上で行列する動画が投稿されている。ブディ保健相は「国内の医療機関への酸素は行き渡っている。不足については、工業用に生産されたものを転用して対応する」と話した。

日本人の感染、インドでも

 在外邦人の新型コロナの感染では、4月から5月にかけて1日の新規感染者数が世界最多の40万人を超えたインドでも、大使館などに報告があっただけで約350人にのぼる。

 すでに多くの日本人が帰国したが、デルタ株がさらに変異した「デルタプラス」も出てきた。医療サービス会社の現地代表は「ワクチン接種が思ったほど進んでいない。デルタプラスにどこまで効果があるのかも不透明だ」と心配する。(半田尚子、奈良部健

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